2012年09月30日

『西の魔女が死んだ』(書評2012 37/50)

久しぶりに「いい小説を読んだ」と心から思えた一冊。子どもたちにもずっと読み継いで欲しいと思った名作でした。

ストーリーは単純です。学校に行きたくなくなった中学生のまいが、不登校の間、田舎でひとり暮らすおばあちゃんのところに世話になる。物語は、このおばあちゃんとまいの暮らしを中心に描かれています。

この小説の良さは、やはりこの二人の描写。まいと、彼女が大好きなおばあちゃんの暮らしを、いつまでも眺めていたくなる。お互い「好き」「信頼している」という感情を、愛情溢れる形で表現するのがいいなー。決してストレートということではないんですけどね。
《「まい、こちらと交代してください」
 おばあちゃんは木じゃくしをまいに渡すと、おたまを手に取ってお鍋の中を二、三回ぐるぐる回し、ジャムをすくって次々にガラス瓶に入れ始めた。そうやってできたたくさんの瓶詰のジャムは、日常使うほか、棚の奥にしまわれておばあちゃんが人を訪問するときの手土産になったり、まいたちが遊びにきたときのプレゼントになったりするのだ。
 ようやく全部の瓶にジャムが詰められ、まだ熱いうちにきっちりふたも締められた。
「今年はまいが手伝ってくれたので、本当に助かりました」
 薄く切ったかりかりのトーストにバターを塗り、できたてのジャムをスプーンですくって載せ、ねぎらうように、まいにそれを渡しながら、おばあちゃんが言った。
 まいは本当にとてもうれしかったのだけれど、できるだけさりげなく言った。
「来年も、その次も、ずーっと手伝いにくるよ、おばあちゃん」
 おばあちゃんはうれしそうに笑って、何も言わなかった。
 まいとおばあちゃんのつくったジャムは、黒にも近い、深い深い、透き通った紅だった。嘗めると甘酸っぱい、裏の林の草木の味がした。》

おばあちゃんは、イギリス人で、日本に来て、まいのおじいちゃんに当たる日本人と結婚した。このおばあちゃんがイギリス人というのが、サンドイッチの作り方とか、ガーデニングの仕方とか、死生観とか、いろんな局面で、印象的な効果を与えている。タイトルにもある「魔女」というのも、そういったところに起因していて、おばあちゃんも「魔女」であるし、血のつながったまいも「魔女」なのだ。

この小説は、まいとおばあちゃんを見ていたい「キャラクター小説」なんだと思う。でも、おばあちゃんが死んだところから始まるところや、まいにとっての「嫌な体験」の設定の仕方、そして「西の魔女が死んだ」というタイトルに至る細部まで、実に綿密に作り込まれた実に完成度が高い小説だと思います。大人だけでなく子どもも読めるところもいい。僕は、今まで何作の小説を読んだかわからないけど、確実に五本の指に数えたいと思ったまさに名作でした。

*この作品を「いいなー」とツイートしたらある方に「DVDも出ています」と教えていただいた。アマゾンレビューを観ると傑作の声が多いんだな。見てみよよう。



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2012年09月28日

「こどもの城」を残して欲しい

20120506134144.jpg今日のニュースで、こどもの城が2015年でなくなると知った。

別のブログでも、書いていますが、個人的に「こどもの城」の大ファンです。
<TOKYO TODAY こどもの城>
大変残念なニュースで、なんとかしたいと思う。
厚生労働省は28日までに、国立総合児童センター「こどもの城」(東京都渋谷区)を2015年3月末に閉館することを決めた。施設の老朽化などが理由。こどもの城は児童の健全な育成を目的として1985年に開館。現在は財団法人「児童育成協会」が国の補助金で運営しており、子どもが親と一緒に球技や水泳、図工などの体験教室を楽しめるほか、劇場も併設されている。11年度の来館者数は約85万人。厚労省が10年に実施した省内の事業仕分けで、仕分け人から民間委託を含めた事業の見直しを求める声が相次いだ。老朽化に加え、最近は民間のテーマパークが人気を集めていることから、厚労省は国立施設としての役割を終えたと判断した。跡地利用は未定で、今後検討する。

このニュースの「最近は民間のテーマパークが人気を集めていることから、厚労省は国立施設としての役割を終えたと判断した」という一文には、かなり違和感を覚える。

なんだよ、それ。

民間のテーマパークと、こどもの城の役割は全然違うでしょう。民間のテーマパークは、はっきり言って、子どもはお客さん。お客さんが飽きないように、どんどん刺激を与えてくれて、構ってくれて、ファンにさせて、何かを買ってもらうところがほとんど。否定してるわけじゃないですよ。そういうのもあって当然だし、僕もジブリ美術館とか好きなテーマパークはあります。ディズニーにこどもと行っても楽しいしね。

ただ、こどもの城をそんなテーマパークと同列で考えてどうするんですか。こどもの城は、子どもが能動的に遊ばなきゃいけないところ。原始的なオモチャがあって、それをこどもが積極的に遊ぶことで楽しむところ。こどもはお客さんじゃないし、いっしょに行ってる親もお客さんじゃない。楽しもうと頑張ることで、子どもが成長するところ。だから一見派手さはないし、初めて行っても楽しめない人もいるかもしれない。自転車とかそうでしょ。初めて乗っても乗れない。でも挑戦し続けると乗れてすごく嬉しい。そんな感じ。面白すぎる遊具はないけれど、園内を使ったオリエンテーリング的なゲームとか素晴らしかった。スパイごっことか宝探しごっことか、スタッフの人がこどもと同じ目線で遊んでくれてサイコーだった。テーマパークじゃこんなのできないですよ。それも、この渋谷の一等地でね。
渋谷界隈なんて、なかなか小さいこどもを連れてお弁当食べたりする場所もない。こどもの城には、ちゃんとお弁当を食べることができるスペースがあって、乳幼児を連れたお母さんのとてもよい交流の場だったし、憩いの場だった。

これを「役割を終えた」って何を根拠に言ってんだか。

建物の老朽化というのは、たしかにあるかもしれない(使える気もするけどさ……)。なら、今後の運動で、この跡地には、今のこどもの城の精神を引き継いだこどものためのスペースをぜひとも作って欲しいと強く思う。建物の役割は終えたかもしれないけれど、こどもの城の役割は終わっていないと強く思うのです。そして、まだ行ったことのない人、とくにパパがこども当番になった日とかぜひ行ってみてよと、これもまた強く思うのでした。楽しいよ。
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2012年09月21日

『かもめ食堂』(書評2012 36/50)

渋谷の「COOK COOP」という料理本の専門店には、レシピ本やエッセイ、絵本など料理に関する本がいっぱい並んでいて楽しい。こないだせっかく寄ったのだからと数冊買ったなかの一冊がこの『かもめ食堂』。映画にもなった作品で、もちろんタイトルは知っていたけれど未読だったので読んでみた。

話は、いたってシンプル、単純。
料理が好きな38歳のサチエが、フィンランドに行って「かもめ食堂」を開く。そして現地の人や、日本から偶然やってきた2人の女性との交流を描いている。それだけ。
物語の起伏もあまりないし、話はとても都合がよい(海外で食堂を作りたいと思って宝くじを買ったら1億円当たるとか)。でもね。そんな小説的な弱点も微細に思えるほど、この設定がなんか楽しいのです。

とくに主人公サチエのこだわりがいい。宣伝はしたくない。ちゃんとしたものをまじめに出したい。そしてフィンランドであっても、絶対に「おにぎり」を食べて欲しい。

《「私が子供のときは、友だちの家のおにぎりを食べさせてもらうと、その家の味がしたのよ。同じ御飯と海苔だけでも、全然、違ってた。そして同じようなおにぎりでも、おいしいのとおいしくないのがあった。ああいう人の手で直接にぎるものは、その人が出るのよね。サチエさんのは、とってもおいしい」》

そんなサチエのおにぎりは作中でこんな風に評されているのだけど、たしかにおにぎりは「その家の味がする」ものだよね。そうだよね。と、食べることについて、このサチエのこだわりに「そうそう」とうなずきながら読んでいるうちに終わるのがこの「かもめ食堂」。ストーリーではなく、人物を楽しむ物語で、こういうのもいいナと僕は思いました。

で、明日はお彼岸で「おはぎ」を食べる日。うちの奥さんが、いつの頃からか、近所の子どもたちといっしょに「おはぎを作る会」を催しているのだけど、この「おはぎ」の参考書が、飯島奈美さんの『LIFE』という本。料理本の傑作に挙げられる一冊なのですが、この本の著者である飯島さんこそ、映画『かもめ食堂』のフードスタイリストなんだよなー、そういえば。飯島さんの料理を見るだけでも値打ちありそうだから、今度DVD借りてこよっと。

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2012年09月20日

『それでも建てたい家』(書評2012 35/50)

建築家として名高い著者による、実に面白く実に為になる家の本。今、建築関係の仕事をしているので関連書をいろいろ読んでいるのだけど、そのなかでも抜群に面白かった。平成3年に書籍化されたものだけど、今でもまったく古びれず新鮮です。

それで、この著者が、言いたいことは、こんな一文によく表れているだろうか。

《システムキッチン作ったら料理がうまくなると思うな、子供室作ったら子供が勉強すると思うな、寝室きれいにしたら夫に再び情熱の日が戻ってくると思うな、収納たくさん作ったら家の中きれいになると思うな、リビングルーム作ったら家族の団欒一挙に盛り上がると思うな》

多分に毒舌なのですが、これが的を射ているのです。要するに、なぜ、私たちは家を建てるときに、既存のフォーマットに流されてしまうのか。なぜ、自分の生活を見つめて、そのスタイルにあった家を選べないのか。こういう問いかけなのですよ。これすごく重要だと思う。

リビンク、キッチン、ダイニング、子ども部屋。部屋を構成する要素というのは、こういう具合に昔から決まっていると思いがちだけど、これは戦後に始まったことなんですよね。誰もが当たり前のように家を買って、同じような間取りの家に住む。これは決して日本的な伝統の上にある事象ではなく、戦後の政策によって道筋がつけられたもの。この本にもあるけど、明治期までは、ほとんどの人が借家に住んでいた。
家を買う。そして、決まった間取りに住む。このことにもっと疑問をもって、自ら考えるべきだとこの著者は説く。
「ねえ どうしてリビングって部屋がいるんですか? ウチはこの四畳半で親子四人食後ズーッと過ごしていて、別にそんな雑誌に出てくる応接セットが置いてあるような部屋なんか要らないような気がするんですけど」

本書の中で著者が施主からの声を掲載しているんだけど、そんななか褒め称えているのがこんな声。やはり、自分のスタイルを家にどう反映させるのか。そういう率直な意見を述べられる人があまりいないのが現状なんだという。
たしかに建売り住宅を見ていけば、どれもあまり変わらない。そうなると、駅とか値段とか勘案して、自分の身の丈にあった家を選択する。
そのことにもっと疑問をもっていいんじゃないのというのが著者の論。
それに多くの人は、別に住みたい家もないし、どんな家に住むべきかという私見もない。
これが当たり前。でも、ここを改めて考えてみてよと著者は問うのです。
ではなぜそういう人が多いのか。それは日本の教育にも関わってくる。

《よその国では、原則として高校までに男の子は家のメンテナンス、家庭電気製品の修理、女の子はインテリアコーディネーションの基礎を殆ど習っている。フィンランドの小学生用の建築の教科書なんか、国土と建築の様式、生活用具、公営住宅、都会に住むことと田舎に住むことの違い、建築の工法、ギリシア柱頭の様式(中略)なんていうのがみんな絵入りで書いてある》

これはすごく考えさせられる。なぜ、日本では、大切な「家」について学ぶ機会がないんだろう。おそらく一生で一番高い買い物になる家。おそらく一生の快適性を左右する家。その家について、義務教育でまったく学ぶことがない。服もそうだ。普通の義務教育では服について習わない。生涯にファッションに費やす金額も膨大なのに、なぜ服について習わないのか。裁縫のイロハじゃなくて、服とはなんぞやということを学ぶべきだと思う。食もそうだ。食の問題は、義務教育で習うべきでしょう。どう考えても、もっともっと習うべき。

僕はこの本を読んで得た最大の気づきはここで、日本の義務教育はぜひ「衣・食・住」という科目を設けて欲しいと思ったのでした。といってもそう簡単に始まるわけはないだろうから、そういった本を作ろうと思ったし、僕も勉強しながら子どもたちに教えていこうと思った。「国語、算数、理科、社会」も大事だけど、それと同等に「衣・食・住」も大事なのでは?と思わせてくれた面でも、この本は大変名著なのでした。

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2012年09月10日

僕なりのダイエット〜こうして痩せました〜

ここ最近、会う人、会う人「痩せました?」と言われる。
それはもう戦略的に痩せてるんで「その通り!」と胸を張っているわけですが、40歳にもなると「この人、もしかして病気して痩せたのかしらん?」と思っている人もいて「ちょっとドキドキしながら指摘しました」と言われたりする(笑)。

そこで、ここでキッパリ痩せたよ。こうやって痩せたんだと公開しておきます。
ここ半年で痩せたので、半年以上ぶりに会った人には特に驚かれるのだけど、別に病気したわけじゃないですからね。

といっても、痩せたのは、だいたい5キロくらい。60キロ台前半から50キロ台後半になったのですが、これくらいでもけっこう違うもんですね。

それで、何をしたかといえば、それはもう本を読んだということなのです。そう、僕のダイエットに名前をつけるとしたら「読書ダイエット」といえるでしょうか。どんな本を読んだのかは、このブログで今年の書評にあげているものプラスα。いろんな本を読んで、「これは良さそうだな」と思うものを、複合的に取り入れてみた。

ただ、僕の場合は、率直にいうと「痩せよう」としたのではなく、生活改善しようとした意識のほうが強かった。痩せたのは、その結果の副次的なものだと思う。
痩せたいというより、「体を温めたい(冷えを解消したい)」「筋力をつけたい(体を柔らかくしたい)」「集中力を高めたい」こういった要素が、痩せることにつながったんだなーと。

で、具体的に意識していること&実践していることは、こんなところでしょうか。

1 腹は八分目。七分目かな? 食べ過ぎると原稿を書く作業効率が落ちるので、とくに昼は食べ過ぎないようにしています。
2 昼は、蕎麦を食べる。蕎麦だけにすると、腹にもたれないし作業がはかどる。なんでも蕎麦は、すぐにエネルギーに転換するので、とても昼ご飯に向いているそうです。事務所近くの立ち食い蕎麦に通い詰めています。
3 歩く。具体的には万歩計を買ったことの効果がデカイ。成果を目視することは、本当に効果的なのです。
4 ストレッチ。これは腰を痛めてからやってるけど、伸ばすの気もちいいな。
5 ぬか漬け。ま、奥さんがぬか漬けやっているので、それを毎日食べているのと、その流れで家では粗食&和食ですが、この影響も少なくないだろうな、と。

やったことといえば、こんなもん。ちなみに土日以外の毎日食べてる蕎麦は、天ぷらなど自由に選んでいて、縛りはなし。夜はお酒も普通に飲んでいたし、「これはしちゃダメ」というのは、ほとんどない。

こんな感じの生活改善。
で、改めて痩せた要因を考えてみると、やっぱり蕎麦の力は大きいんだろうなと思う。蕎麦は「G1値が低い」とか「ルチンが豊富」といったダイエット豆知識は、ここで細かく書きませんが、もともと窮困食であった蕎麦は、痩せるうえに体にもとてもいいのです。
あとは歩くことだろな。今では、だいたい毎日1万歩を歩けるようになったのですが、これもちょっとしたコツを掴んでから飛躍的に歩けるようになった。
そだな。僕にとって大事なのは、とにかく歩いて蕎麦を食べること
こうして書くとなんか簡単そうだし、安上がりでいいなと思っているのでした。
posted by okataco at 15:58 | TrackBack(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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