《フト気付いたら風呂場の鏡の中に、疲れて消耗し、脂ぎって肥え太ったオッサンがいた。(中略)このまま消費経済に飼い馴らされたブタになってくたばるのヤダなて思った。》
きっかけはこんなこと。鏡の中の自分に衝撃を受けてまさに一念発起。作者は、消費経済から脱却して自給自足の生活を目指そうと福島県の新白河に山を買うのですが、この山がスゴく、ガス、電気はもちろん、水道も通っていないところなのです。
山はまさに山であって、平地もないから家を建てるにも、草刈り機とチェーンソーとユンボを自分で操って更地にして、ここにたった独りでログハウスを建てる。水もないから、ボーリング会社に頼んで井戸も掘る。
この本では、このログハウス作りの詳細から、食事、農園、サウナ作りなど、まさにこの地で「原人」となった作者の奮闘が、リアルに報告されている。
なかでも印象的だったのが、どんどん健康になっていくという話。彼は、この健康を自分のウンチでこう報告する。
《今日のはまた一段と見事。太く、長く、若干どくろを巻いて、かま首を水面にちょんと出して居座っている。あまりに立派なので流してしまうのが惜しまれる》
リアル過ぎるわ(笑)。でも、このウンチで健康がわかるというのは、最近実感してるんです。というのは、しばしば2歳児をトイレに連れて行ってウンチをさせることがあるんだけど、それはそれは立派なものをする。それも一本ドーン! そしてドーン!としたら「おちまい」といって終わり。ウンチがすぐ終わる。で、お尻を拭こうとしても全然汚れていない。スゴい!といつも驚く。ウンチってのは、出たものもそうだけど、その排出ぶりからも人間の機能がわかるんですよね。
食事の話も面白かった。月間の食費を夫婦二人で2万円と決めているので肉など滅多に食卓に並ばない。でもまったく飢えていなく、小さな農園で育てている野菜の消費にも困るほど。
《キュウリに味噌をつけ、ボリボリと日に10本も食う五十男の私は、もはやカッパ。日本の風土は、たいして気張らずとも僅かな畑を営めば、家族二、三人分の野菜を恵んでくれる》
このように自然に寄り添って生きると、この風土の豊かさを感じられる。消費社会目線で見れば貧しいだろうけど、この原人の生活は豊かだ。福島ゆえ震災の影響も少なくなかっただろうけど、自給自足を楽しむこの原人の生活がこれからどうなっていくのか、今後も見守って行きたいと思った一冊でした。