2013年01月25日

目でみることば

長年、取り組んできた著書が出ます。

『目でみることば』2月4日に東京書籍より発売です。どんな本かは、版元の方がAmazonに書いてくれたコピーがいちばんわかりやすく好きだな。

《「高飛車」「おしどり夫婦」「分水嶺」から「くわばらくわばら」「図星」まで、40の言葉の由来を本当に撮ってみた、撮りに行った。 言葉と歴史の雑学満載の、ばかばかしくも壮大な写真集》

 事の発端は、「試金石」でした。もう5年くらい前なのですが、新聞で「この試合はワールドカップの試金石になるだろう」といった感じの一文を見たとき、ふと思ったのです。

「で、試金石ってどんな石なの?」

 これが企画の出発点で、ここからいろいろ調べて実際に試金石を買ってみたところ、これがもう真っ黒の石なんですよ。「試金石」という言葉から僕がイメージしていたものと、全然違って驚いた。そこで、いつも何気なく接している言葉でも、その姿は全然知らないものだなと思い至り、ことばの元となった姿を紹介する企画を始めてみようと思ったのです。

すると既存の辞書でも、その姿はイラストでは描かれていたりはするのですが、その写真を集めたものは、皆無。なら、やろう。それも、どうせならきれいな写真で、一点、一点丁寧に撮って行こうと思って、カメラマンの山出高士さんとともに、作ってきたのがこの本です。

こうしてようやく揃えた写真は、以下の40点。思った通りの姿から、予想外の姿まで、ずらずらっと並んでいるので、パラパラ見ていただくだけでも、面白いと思います

「目でみることば」で、その姿が写真で紹介されていることば一覧 


1 阿吽の呼吸/2 阿漕/3 頭隠して尻隠さず/4 急がば回れ/5 いたちごっこ/6 浮き足立つ/7 うだつが上がらない/8 独活の大木/9 瓜二つ/  10 おしどり夫婦/11 折り紙付き/12 几帳面/13 金字塔/14 くわばらくわばら/15 剣が峰/16 互角/17 コロンブスの卵/18 差し金/19 試金石/20 鎬を削る/21 勝負服/22 図星/23 反りが合わない/24 高飛車/25 蓼食う虫も好き好き/26 玉虫色/27 天王山/28 薹が立つ/29 灯台下暗し/30 とどのつまり/31 どんぐりの背比べ/32 拍車を掛ける/33 羽目を外す/34 贔屓/35 引っ張りだこ/36 火ぶたを切る/37 分水嶺/38 洞ヶ峠/39 もぬけの殻/40 埒が明かない  

個人的なおすすめは「灯台下暗し」と「羽目を外す」と「分水嶺」かな。「どんぐりの背比べ」もいいなー。

《ばかばかしくも壮大な写真集》というキャッチコピーをつけてもらっていますが、当人もそう思います。ばかばかしいことに、とても真面目に取り組んだから面白くなったのではないかなと思っています。きっと学校で国語の授業に使ってもらっても、生徒が関心をもってくれると思いますので、先生方も是非ご覧くださいませ。

僕は「汗と笑いの結晶」だと思っていまして、山出さんとともに、引っ張りだこという写真を撮るためだけに、愛知県の日間賀島という小さな島まで大人二人で出かけていったりしたのは、とても良き思い出です。

この本は作る過程もとても楽しかったので、「ことば」はこれからも僕のひとつのテーマにして活動していく予定。さしあたって「ことば探検プロジェクト」と銘打って、何かコンテンツを作りつつ、本を出していければなと思っているのですが、そのあたりはまた本格始動したら、告知していきます。

というわけで、『目でみることば』、どうぞごひいきに。

*メディアの方や書店さんなど、取材や問い合わせ、ポップくださいなどありましたら、お気軽にご連絡ください。喜んで対応させていただきます!
okataco@yahoo.co.jp までご連絡ください。
*この本の情報は「目でみることばblog」で更新中です。見てやってください!

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2013年01月17日

『実録・はじめての少額訴訟』(書評2013 3/50)

同じFC東京サポとして、長らく苦楽をともにしている高井ジロルさんが出版した『実録・はじめての小額訴訟』。これが、色んな方に是非読んでもらいたいと思う快作なのです!

快作だと思う理由その1は、<実録>と銘打たれているように、高井さん自身が体験したことが、この本のベースになっているところ。高井さんが、W出版と仕事をして、仕事を終えたのに、当初の契約にある30万円を支払わないまま、担当者も辞めて、あろうことか社長も会社を身売りしたというどさくさにまぎれて、この支払い義務をなきものにしようとする。そうはさせるかと高井さんは、いろんな法制度を調べて、小額訴訟という仕組みがあることを知り、これを実践、そして紆余曲折の末に25万円を手にいれるというノンフィクション。

単なる物語に終始せず、必要な書類や金額など、事細かく書かれており、これから小額訴訟をしたいという人にも役に立つ。
そしてフリーランスとしては、「こういう制度があるんだ」と知っておくだけで、とても心強いと思う。仕事をしたのに、ギャラが支払われず泣き寝入りというケースは、僕の周りでも漏れ聞くこと。そんなときに、国の制度として小額訴訟というものがあり、これが機能しているという現実は、多くのフリーランサーを勇気づけると思うのです。

もう一点、快作だと思うのは、この本がAmazonの電子書籍端末「Kindle」通じて個人が出版できる「Kindleダイレクト・パブリッシング」で作られている点。

つまり既存の出版社を通した出版ではなく、電子書籍を使った自費出版という形をとっているのです。何かを伝えたいとき、紙の本で出版するには、企画を通して、規定の枠に収めてと、いろいろハードルが在るのだけれど、こういった形であれば、短時間で世に発信することができる。もちろん、電子には電子の、紙には紙の良さがあるので、一概に電子がいい!と言う気は毛頭ないのですが、こういった形で電子書籍が手軽に出せることは、これまたフリーランサーにとって、ひとつの武器になるとは思うのです。

 あと、この電子書籍はこれから自分の作品を作る上での通過点としてありだと思っています。もう僕は、前からあまり企画書というのを頑張って作らないようにしている。企画書を作るなら、その作りたい本を作り始めて、もうその実物を見せて企画を通している。そのほうが結果的には効率がいいし、そうしたほうが覚悟もできて、その覚悟が推進力となって結実している。高井さんも、これをベースに出版にこぎ着けようとしていると思うんだけど、足がかりとしての電子書籍は、これからもっと普及するんじゃないかなーと感じています。

 そんな高井さんのこの本は、一部なんとたったの100円。フリーランスの方は、この100円でいろんなことを、学べると思いますよ。


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2013年01月10日

『星の王子さま』(書評2013 2/50)

NHKのEテレで毎週放送されている「100分で名著」という番組があります。
1週に25分×4週でちょうど100分。この100分で、名著の解説を試みるわけですが、これがけっこう面白い。以前は、なんか退屈な感じだったのですが、途中からリニューアルで聞き手に伊集院光が加わり、とても親しみやすく、面白くなりました。

この番組で、去年の年末に取り上げられたのが、サン=テグジュペリの『星の王子さま』。子どもの頃と、大学の頃にも読んだ記憶があり、有名な言葉
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
なんてのも、心に残っている。そうそうキツネとか、バラとか出てくるんだよね。と、そんな記憶はあったけど、あの本をどのように解説していくのか興味があって、改めて読んでみた。そして「100分で名著」を見ながら振りかえってみたのです。

番組は、とても丁寧でした。パッと読んだだけではわからない、バラや井戸といったキーワードが意味するところを深く解説してくれていて、また違った視点でこの作品に接することができた。今回、改めて心に残ったのは、こんな言葉でしたね。

《「夜になったら星を見てね。ぼくの星は小さすぎて、どこにあるのか教えられないけど。でもそのほうがいいんだ。ぼくの星は、夜空いっぱいの星のなかの、どれかひとつになるものね。そうしたらきみは、夜空ぜんぶの星を見るのが好きになるでしょ……ぜんぶの星が、きみの友だちになるでしょ。」》

ひとつを好きになると、その世界が好きになる。いろんなことに通じる哲学。「世界を愛する」って、ありそうであり得ない。でも「家族を愛する」という身近なステップが、結局は「世界を愛する」というところにたどり着く。そんなことを考えたりしました。

あと、改めて「星の王子さま」を読んで素朴に思ったのは、日本人作家によるこういう寓話的なお話は、なぜあまりないのだろう? という疑問でした。

いや、あるのかもしれないけれど、哲学を感じたり、説話的である物語って、たいてい外国作家によるもがヒットする印象がある。

以前、読んだ「なぜおじさんは時代小説が好きか」という本に、時代小説で書かれた義理や人情は読めるけれど、これが現代ドラマだと、とても読めないといった話があった。

これに似て、こういう話は、外国の話だから読めるというのはあるんだろうな。寓話的、指導的な話は、外国の話だと、わりと素直に受け止められるのに、日本の話だと、身構えてしまう。穿ってしまう。同じような内容の啓発本であっても、なんとなく外国人が書いたものだと有り難がってしまう。そんな姿勢が、僕たちにはあるんじゃないかな。でも、日本人には、日本人に即した寓話性や説話的なものが書けると思う。個人的には、もっとそういう物語を追求してみるのも面白いな、と考えるきっかけになりました。

まあ、そういうわけで「100分で名著」は面白いよというおすすめなのでした。名作と対話するきっかけをくれるので、これからも風呂上がりのストレッチ体操のお供に見て行こうと思っています。

*そういや、書店の棚を見ると、小中学生向けの物語にも「外国産」のものが多いんだよな。「マジックツリーハウス」とか「ダレンシャン」とか、目につくのは外国作家のものが多いように思う。俺は国産の王道ジュニアファンタジーを読みたいぞ。探してみよう。


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2013年01月07日

『八重の桜』

昨晩から始まったNHK大河ドラマ『八重の桜』。
待望の幕末〜近代のドラマだし、福島と京都が主たる舞台になることもあって、前から楽しみにしていました。そうそう、上の子が今年から小学校に上がることもあって「日曜はいっしょに大河ドラマを見るから夜更かしオッケー」というお触れを出して、子どももいっしょに家族で見ることにしました。

僕もそうなのだけど、家族で見た大河ドラマというのは、ずっと心に残っていて、歴史の授業の助けになるだけでなく、いろんな面で子どもを形作るひとつのピースになると思っています。だから、これからもできるだけいっしょに見ていこうな。

さて、そんな『八重の桜』ですが、今日発売の「週刊現代」に、ちょっと面白いことが書いてあった。この先の展開など気になる人は各人読んで欲しいのですが、僕が興味を持ったのが、脚本を担当する山本むつみさんのこんな言葉。

《「覚馬はまさに歴史に埋もれていた人物です。これだけの偉業を果たした人が、ほとんど知られていないことに驚きました。大河は歴史ドラマ。この歴史の部分を牽引するのは覚馬です。彼が時代の転換点を見つける役目を果たす」

山本覚馬というのは、八重のお兄さんですが、この人物が本当に歴史に埋もれた偉人なのですよ。ここにWikipediaのリンクを貼っておきます(「山本覚馬」)が、歴史的に重要な場面や人物との関わりが多いだけでなく、途中、視力を失うなど逸話も大変多い。

《覚馬は維新後に購入していた旧薩摩藩邸の敷地(6000坪)を学校用地として新島に譲渡》とあるけど、今の今出川校舎の土地は、覚馬があるからこそなんですね。

以前、『紅』という浅井長政の三姉妹の大河があった。あのドラマが失敗したのは、紅という三姉妹の三女に過ぎない女性を、歴史の表舞台に上げ過ぎたことだったと思う。織田信長や秀吉といった人物が、なぜそこまで紅という人物と関わりを持つのか。大河ドラマは嘘があってもいいのだけど、あまりにも荒唐無稽な嘘で、興が醒めて見なくなった。その点、この『八重の桜』にはこの覚馬がいる。《この歴史の部分を牽引するのは覚馬》というフレーズは、とても重要で、これが主役とイコールであるドラマは、なかなか難しいと僕は思う。

 歴史ドラマなので、歴史にも触れなくてはならないけれど、本当に人が見たいのは、その時代に人がどんな生活をして、どんなものを食べて、どんな恋をして、どう死んだのか。その日常にある。

 この日常のドラマと、歴史的な動きを、どう物語の中で展開させるのか。これに対するベストな答えが、日常を見せる人物と、歴史を見せる人物のダブル主役体制。夫婦であるのが、一番わかりやすけど、『八重の桜』の場合、これが兄妹になっているわけです。去年、渡辺謙が主役を演じた「吉田茂」のドラマが同じNHKであったけれど、これも歴史を動かす吉田茂が主役であったため、日常を描くという視線が乏しく面白くなかった。やはりこの「歴史」と「日常」という考えは大事だと思う。

 その点、大河ドラマにおける「歴史」と「日常」という両輪を、山本覚馬と新島八重というた二人に担わせる『八重の桜』は、かなり期待していいドラマだと思います。僕は、とても楽しみに一年かけて見るつもりです。
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『ツナグ』(書評2013 1/50)

あけましておめでとうござまいます。今年もよろしくお願いします。

さて、今年、最初の書評は辻村深月さんの『ツナグ』。昨年の末の記事で「小説の書評は難しい」と書いたけど、出来るだけ小説も取り上げていきます。とはいえ、その作品が、何かを書き留めておきたいと思わせるパワーがないと、なかなか書けないのですが、本作は大変素晴らしかった。

1980年生まれと若いながら直木賞を受賞し、かつ僕の周りでも評判が高かった辻村深月という人は、ずっと前から気になっていた。

「読もう、読もう」とすでに2冊買っていて、ずっと積ん読¥態だったのを、年末年始の帰省のお供に持って行ってようやく読めたのが、この作品。脱帽レベルでよかっです。

設定は、わりとシンプル。死んだ人と、生きている人を対面させることができる「使者(ツナグ)」がいる。これを核に物語は展開する。

僕が、すごくうまいと思ったのは、核を膨張させずに、このなかで出来ること、やれることを考えて考えて緻密に細かく丁寧に描いているところ。

僕の感覚なんだけど、作家には2タイプあって、ひとつは物語を広げることで勝負をする人。僕自身もそうんだけど、「こんなこともできるよ」「こんな展開もあるよ」と、一つの核から、あらゆる方向に広げることを模索するイメージ。なんとなく、男の人はこういうタイプだと思う。

もうひとつは、物語をできるだけ広げず掘り下げるタイプ。ひとつの事象にこだわって、こだわって書き続ける人。情景描写か感情描写が上手な人は、このタイプで女性作家に多いと僕は思っています。

僕が脱帽するのは、僕にない感性でもあるので断然後者。森絵都とい人は、このタイプで、いちばん好きな作家さんだけど、この辻村さんもまさにこの系統でした。この本の中で、映画館でポップコーンをいっしょに食べた女性が、そのことに感動するという描写がある。

「今時ポップコーンで感動する女がいるかよ」と、友達は揶揄するのだけど、物語の最後に、このポップコーンの箱が、きれいに洗った後、宝箱から発見されるという話があった。これに、僕はやられた。すごいな、と。ポップコーンを食べて喜んだということを、ここまで物語の大きな波にできるんだと、拍手を送りました。

僕も、物語を構想するとき、何気ないひとつのものを、もっと使えないか、もっと掘り下げられないか、考えよう。こんなことを、この小説から学んだのでした。

僕は、小説の「美味しそうな描写」を長年、集めていて、いつかどこかでまとめたいと思っています。この本にもそんな箇所があったので、メモとして残しておきます。

《普通の家は海苔で巻くおにぎりを、うちは卵で巻いた。ふりかけを混ぜて握ったご飯を、小麦粉と、溶いた卵につけて、一面ずつフライパンで焼いて固める。そうすると、表面が卵で黄色くコーティングされたおにぎりができる。歩美くんのおにぎり、黄色い、と他の子から羨ましがられ、歩美自身も自慢だった。卵から漂う焦げの匂い。褒められたことを話したら、「また作ってあげるね」と母は嬉しそうだった。》

黄色いおにぎり、いいね。食べたことないけどシーンが浮かぶよね。いつか作ってみたいと思わせるのがいいのでした。

僕は、あまり同じ著者の本を多読しないのだけど、この辻村さんの本は、旅行における最高のお供として取っておこう。今、僕のなかでは、池井戸潤さんと同じくらい、読むのが楽しみな作家さんになりました。

posted by okataco at 00:13 | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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