2013年02月26日

『蒲生邸事件』(書評2013 6/50)

去年から、歴史ライターの上永哲舟さんといっしょに「或る一日を歩く」と銘打った試みをしています。これは、歴史のある一日にスポットを当てて、その一日を歩いてみるというもの。たとえば、第一回目は、勝海舟の気持ちになって、赤坂の勝の邸宅跡から、田町にある西郷と勝の会談場所に行きました。有名な、江戸城無血開城の談判場所まで、勝がどういう気持ちで歩いたのか、その足跡を文字通り辿ることで、なにか見えるのでは―そんな気持ちで歩いています。
ま、主な楽しみには寄り道とか、お酒といった部分であったりするのですが、これがやってみると実に楽しいし、いろんな発見があるのです。
で、もう明日というか今日になってしまったのですが、次回は226を歩こうと年末から話していたのです。2月26日に起こった226事件。その名前は広く知られているけれど、何が起こったのか。後世にどういう影響を与えたのかは、意外と知られていない。実は、僕もここ最近、近代史を勉強するなかで、226に関心を持つようになって、個人的に調べていました。そんなとき、読んでみた一冊が、この宮部みゆきさんの『蒲生邸事件』でした。

《『蒲生邸事件』は時間旅行の物語である。平凡な現代青年が一九九四年の冬の東京から一九三六年の同日同時刻へと緊急避難する。そこは「二・二六事件」の現場である。一九九四年に火事になった平河町のうらぶれたホテルは、一九三六年には陸軍大将の邸宅だった。おりしもその邸宅で大将が死ぬ。自殺か他殺かはわからない》

その粗筋は、こんな感じ。通読してみて正直「長い。長過ぎる」と多々思った。しかし、最後はさすがに宮部さん。上手にまとめて、読後感はかなりよかったです。ただ、226は考えれば考えるほど陰鬱になることは否めない。

《二・二六事件というものは、日本が暗黒の時代へとなだれこむ、その転換点であったのだろう。この先に待っているものは、死の恐怖と欠乏と飢えという、忌まわしいものばかりなのだ》

文中にもこうあるように、この226は、大きな時代の転換点だった。ただ、桶狭間とか鳥羽伏見といった、竹を割ったような転換点でなく、なんか「グニャ」と嫌な音を立てて曲がったような転換点だったと、感じています。
とはいえ、このあたりの事象に目を背けていると、歴史が現代まで繋がってこないので、今日はいろいろ見て、感じてこようと思っております。

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2013年02月21日

『目でみることば』と代官山蔦屋

蔦屋1.JPG代官山蔦屋というのは、あのTSUTAYAが新たにコンセプトから作った大変素晴らしい書店。本との出会いの楽しさが凝縮されているようなところで、初めて行ったときから大ファンになりました。「書店の未来は暗い」なんてニュースばかりが流れているけど、ここに行けば「書店はまだまだ大丈夫」と思える。そんな大変魅力的なお店なのです。

それで『目でみることば』を作っているとき、デザイナーの佐藤さんと、この店でちょっとした打ち合わせをしたのですが、ふつふつと「ここで売りたい!」と思うようになり、文芸の棚のこの本とこの本の間に置いて欲しい!と、厳密な場所まで夢見るようになったのです。そこで見本が出来たとき、一人でノコノコ行って「すいませんが、この本、見てもらえませんか?」と、見せに行ったのです。そのとき、担当の方は不在だったのですが、今日、写真とともにこんなメールをいただきました。《以前は当店に御来館頂き、誠にありがとうございます。ご本もありがとうございます。拝見させて頂き、大変素晴らしかったので、ただいまエスカレーター脇の平台にて大展開させて頂いております。》うれしいなぁ……。代官山蔦屋は、本当に書店の未来は明るいな!と思わせてくれる素晴らしいお店です。未踏の方はぜひ行ってみてください。で、この本の晴れ舞台を見てやって下さいませ。

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2013年02月18日

スッキリ!!

専用ブログでも書きましたが、明日の「スッキリ!!」で『目でみることば』を紹介してもらえることになりました。午前10時頃から「テリー伊藤のスッキリ!TIME」というコーナーのようです。お時間ありましたらご覧ください。同日の毎日新聞の夕刊でも紹介していただけるみたいなので、機会ありましたら併せてお願いします。お知らせまで。
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2013年02月17日

『東京カフェ散歩』(書評2013 5/50)

先日、千駄木にある「往来堂」という本屋に行った。関連陳列という、内容に関連がある本を、単行本も新書も文庫も漫画も関係なく並べていくという大変魅力的な店作りをしていて、いつ行っても楽しいお店。「街の本屋の復権」を掲げて生まれ変わった店ですが、今の街の本屋のひとつの答えがここにあると思っていて、近所にいくと立ち寄っています。

そんな店に、久しぶりに行ったら店頭の一番目立つところに『京都カフェ散歩』という文庫本が「これをもって早く京都にいきたい」という文言のPOPと共に置かれていて、改めてこの店が好きになった。

というのは、この川口葉子さんの一冊は、今、僕がいちばん好きな京都の本。京都に帰省するたびに、この本に出ているカフェに行って本を読んだり書き物したりして、お陰でどれだけ充実した時間が過ごせただろうか。店のセレクトもいいし、行った後からその店の文章を読むのもいい。また文庫サイズなので、気軽にカバンに入れて、京都散策もできる。京都に行くって友達から聞いたら、いつも勧めているのですがみんなに好評。京都という言葉から感じる時代感、空気感と違うステージの心地よさを教えてくれる本なのです。

そんな『京都カフェ散歩』の姉妹編ともいうべきが、今回出版された『東京カフェ散歩』。渋谷ヒカリエの「d47食堂」や代官山蔦屋なども取り上げ今の風を伝えつつも、定番、古典も入ったいいバランス。僕が愛する三軒茶屋から松陰神社前のカフェもしっかり押さえてあって、この沿線民としても誇らしい。スタバやタリーズしか知らない人は、ここから4、5軒行ってみると、カフェというものの文化性を知ることができて、楽しい町歩きができると思います。川口葉子さんは、ほんとこのカフェカルチャーのパイオニア。この人の本は、間違いないです。ただ、京都編と東京編を読んだ人はたぶん京都編のほうがいいと思うはず。それは、京都という空間が定義し得るものが、東京という空間では定義し得ないからでしょうね。京都編が東京編よりも先に出ていることでも、それは物語っているのでしょうが。ま、それはさておき、一冊持っておけば東京が楽しくなること請け合い。ネットのまとめサイトにないものが、ここにあります。

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2013年02月11日

『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(書評2013 4/50)

日本が誇るべき様々なエピソードが紹介されている本。その骨子にあるのは、この一文にもあるように「日本文明」を取り戻そうということでしょう。

《日本人は明治維新を経ることで国を守った。だが、その一方で維新により我々は大きなものを失った。我が国が大国への道を選んだ代償として失ったのは「日本文明」である。今の日本にいちばん足りないのは「日本」ではないか。失われた日本文明を取り戻したとき、日本はほんとうの輝きを取り戻すだろう》

取り戻すためにまず大切なのは、日本人自体がその事実を知る事。「もったいない」という言葉が、日本語だけにある表現とか、日本とトルコの強い友情の端緒になったエルトゥールル号の話とか、知っていた話も多かったけど、初めて得た知見も多かった。

そのひとつが、和製漢語の話。これについて中国の研究者のこんな言葉が紹介されている。

《現代中国語のなかで日本語から借用した外来語の数は驚くほど多く、統計的に、我々が今日使用している社会科学、人文科学方面の用語のおよそ七割は日本から輸入したものである。これらはすべて日本人が西洋の語彙を翻訳したもので、これを中国が導入して中国語のなかに深く根を下ろした/我々が使っている西洋の概念は基本的に日本人が我々に代わって翻訳したものである。中国と西洋の間には。永遠に日本が横たわっている》

幕末から明治期にかけて、日本では西洋文化を輸入するために、西洋の概念などを苦心して日本の言葉に置き換えていく。西周という人が、「哲学」という言葉を生み出しという話は有名だけど、こういった当時の人が「西洋→東洋」に翻訳した言葉が、和製漢語として、中国でもこんなに使われているなんて知らなかった。このあたりの話、もっと調べて行きたいな。ちなみに和製漢語の例がいろいろ紹介されていたので、メモがてら少し書いておきます。
<和製漢語の例……環境、関係、国際、自由、主義、出版、哲学、民主、本質、美術、要素、領土、文化、商業>
つまり、こういった言葉は、幕末以前には日本や中国には存在しなかったってことなんだなー。

あとは、納得の事実がいろいろ紹介されていた。たとえばこんなの。

《世界の歴史には、ルイ十六世や西太后などに見える、権力者が贅沢三昧をしてきた記録は枚挙に遑がないが、そのような逸話は日本の皇室には伝わらない。国が疲弊した困難な時代はもとより、日常的に歴代天皇は質素倹約を是とし、現在に至るのである》

僕たちにとって当たり前のことかもしれないけれど、これはとても偉大なこと。こういった日本の誇るべき点をしっかりと伝えていくのはとても大事だ。そのための入門書として、手頃な一冊だと思います。
*今日は「建国記念の日」。これがどういう日であるか、正確に言える人は少ないと思う。「勤労感謝の日」も、とても曖昧な休日になってしまったけど、国民の祝日の本当の意味、意義くらいきちんと小学校や中学校で教えて欲しいと強く思うのです。

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2013年02月03日

目でみることばblog

『目でみることば』が、いよいよ明日に発売になるので、専用ブログを立ち上げてみました。よかったら覗いてください。

「目でみることばblog〜ことば探検プロジェクト〜」


この本を作る過程の話を、いろいろ書いていきます。
また、街角や新聞などで見つけた「ことばの不思議&魅力」も、ここで発信していきます。
この一連の活動は「ことば探検プロジェクト」として、これからも継続していきますので、興味のある方は、見守ってくださいませ。お知らせでした。


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