2013年04月12日

『40歳のためのこれから術』(書評2013 11/50)

松浦弥太郎さんが綴る「40歳」を基点とした生き方エッセイ。

以前、このブログでも「30歳の成人式」といった話を書いたけれど、節目節目に立ち止まって考えることの大切は、折々に感じていたので手にとってみた。個人的にも、昔の自分にこだわらないことこそ、年を重ねたときの「生き易さ」だと常々思っているのだけど、この本にも同じような共感するエッセンスがいくつかあったのでメモしておきます。

《僕は四〇歳になったときに、ひとつの目標を立てました。「七〇歳を自分の人生のピークにする」》

僕は、今まで色んな人にインタビューしてきたけど、心に残るのは、だいたい年配の方だった。「いい顔だな」と思うのも、60歳、70歳、80歳って人が多かった。もちろんインタビューするくらいだから、普通の人とは違う「一角の人」ではあるのだけど、しっかり積み重ねると、年配の方のほうがいい顔だなとよく思う。20歳や40歳じゃなく70歳をピークにしょうというこの提言、実にいいし、これからの社会に大切だと思った。20歳より70歳のほうがいい顔をしている人は、多いと思うな。

《「ピークを意識する」とは「終わりを意識する」ことです。自分が老いるということ、死ぬということを受け入れる。これも四〇歳でしておくべき覚悟だと感じます。「老後のことはまだ先でしょう」「なるようになる、なんとかなる」このように嘯く人は、老いと死についての覚悟がないから、考えることから逃げているのだと感じます》

同感。今、死を考える本もよく売れているけど、40歳くらいから読むのはいいと思う。

《今は「若さに価値がある」とされがちな時代です。誰もが歳をとることを恐れ、見た目が若くなるにはどうしたらいいかということも、しばしば語られます。歳を重ねたぶんだけ傷み、古びていくなら、なるほど、歳をとるのは恐ろしいことでしょう。しかしワインのごとく、年月を重ねたぶんだけコクを増し、芳醇になっていくなら、歳をとるのは素晴らしいことではないでしょうか》
今の「若さこそ」という時代性って、どう考えても「ものを売りたい人たち」の考えから生み出されたものだ。ちゃんと歳を重ねることへの尊敬と憧れが、しっかり抱ける社会にしたいもの(もちろん、歳を重ねた人がみんな聖人だとは思いませんけどね)。

《いばらない。誰に対しても同じ態度で接する。すてきな七〇代は「自分が正しい」と思っていないのでとても謙虚です。わからないことがあれば「わからない」とはっきり言うし、素直な態度で教えてもらう姿勢は見習いたいものです。》

本当に同感。素敵な年配の方はみな謙虚で「わからない」とか、知らないことに対する恐れがない。BARなんかで飲んでいると、絶対に「教えてもらう」という態度で話せない人もいるけど、見苦しい。肝に命じておきたい考えです。

《四〇歳を境に「社会貢献」という意味でのpublic relations を築くトレーニングを始めて、社会との関係性を深めていきましょう。会社を大きくする、業績をあげる、個人でなにか発信するというのもトレーニングの一つではありますが、ただがむしゃらにやって我欲に走るとだめになります。目的はあくまで社会貢献だという一点を忘れずにいたいものです》

これからの生き方で基準を見失いそうなとき「社会貢献」というのは、ひとつの指針として忘れずにいたいものです。

本書全体として「自分の年表をつくる」など、取り組みにくいものもあったけど、今の立ち位置をから見ると、含蓄の多い言葉が、わかりやすく書かれていた。これからの人生をちょっと立ち止まって考えるきっかけの一冊としておすすめです。


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2013年04月05日

『重版出来!』(書評2013 10/50)

新米編集者をヒロインにした出版界を描く漫画。これは「じゅうはんでき」ではなく「じゅうはんしゅったい」と読むんですよという出版界豆知識とともに、今広く話題になっている作品です。
設定からすると安野モヨコの『働きマン』を思い出すけど、個人的にはこちらのほうが好み。主人公の黒沢心が、愛すべき体育会系ナチュラル新人で、この子を見てるだけでも楽しい漫画です。

そんななか、見所は『タンポポ鉄道』なる漫画をヒットさせるまでの軌跡。1巻、2巻は出たものの重版に至らずくすぶっている漫画。しかし読んだ人の反応はよく、ほのぼのさせる内容は幅広い読者を獲得できそう。そんな折、勝負の3巻が出る――。

ここで編集、営業、書店がいったいになって、この漫画をヒットさせていく。それほどたいしたことは起こらないし、他の業界から見ればこういった連携はとりわけ珍しいものではないのかもしれない。でも出版界においては、これがもう実にいい話なのです。

《漫画は、おもしろくても売れるとは限らない。売れそうな作品がイマイチだったり、無理そうな作品がヒットしたり、なんでそうなのかわからない―−わからないから、売るのはおもしろいんだ。》

こんな印象的な台詞がある。ただ欲をいえば、こういう台詞を吐く人が、決して漫画のヒロインではなく、この業界で働く人の一般的な感覚になれば、出版界はもっともっと魅力的なところになるはずだと思った。ま、このように出版界いい話を、じんわり伝えてくれるいい漫画。久しぶりに2巻も楽しみにできる作品に出会えて嬉しいです。

有楽町1.JPG*そういやこの漫画で、書店員さんが作った『タンポポ鉄道』の店内ディスプレイを編集者や作家が見て涙するシーンがあるのですが、実は僕も似た体験を最近したのです。奇しくも今日は、僕が脚本を書いている『ヒーローマスク』という漫画の2巻の発売日ですが、このそれほどメジャーともいえない漫画の1巻を、すごくプッシュしてくださっている書店があるのです。それがTSUTAYA有楽町マルイ店さん。担当の人から「行ってみて」と言われて覗きにいったのですが、写真のように素晴らしいディスプレイをドーンとしてくださっているのです。担当の方と少しお話させてもらったのですが「面白いから!僕が売らなきゃと思いました!」と、おっしゃってくださって感激。「面白いから売りたい!」っていいよね。それが自分が関わった本だったので、実に嬉しかった。「2巻も楽しみにしています!」と言っておられたので、有楽町界隈の方、よければこちらでヒーローマスクお買い求めくださいませ!

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ヒーローマスク2巻

脚本を書いている「ヒーローマスク」の2巻が今日、発売になりましたのでお知らせです。最近、このブログの書評の更新が遅れ気味なのは、この脚本のためにという気持ちもあり例年以上に小説をたくさん読んでいるからなのでした。小説や映画って、即効性はないけれど、やはり自分の創作の引き出しを増やすうえで、やはり大事だなと最近思い直しております。

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