2010年12月23日

サムエル・ウルマンの「YOUTH」

なんとなく昔の記事を読み返していたとき、別のブログで書いていたサムエル・ウルマンの詩の訳文に出会った。
改めて読むと、やっぱりとてもいいなぁと思ったので、ここで紹介してみます。原文はこのあたりがわかりやすいかな。若さとは、心のありようなのです。。。


『若さとは』 サムエル・ウルマン  自由訳・岡部敬史

若さとは、人生のある期間を指すのではなく、心の中身のことを指す。

肌の張りとかツヤ、体の柔らかさといった身体的特徴なんて、若さとは関係ない。

大切なのは、意志の強さ、想像力の豊かさ、情熱の絶対量といった心の中にあるもの。

心の中が充実している限り、人というものは、ずっとイキイキとしているのだ。

また、“若い人”とは、描いていた理想を安易にあきらめて楽な方向に流されたりはしない。
多少の困難があろうとも信念を貫き通す力を持っているものだ。

こういった力は、実は、二十歳の人よりも六十歳の人のほうが持っていることが多い。

そう。つまり、人は年を重ねただけでは老いない。理想を失うことで老いるのだ。

月日の流れは単に肌の皺を増やすだけだが、理想を失うことは魂に皺を増やすことになる。

そして心配、恐れ、自己不信――。こういったものが心を老化させ、気力を奪い取ってしまうのだ。

胸に手を当てて感じてごらん。

すべての人の心には、子供のような尽きることのない好奇心と人生を楽しみたいと思う気持ちが満ちているはずなんだ。

ほら、みんなの心には、そういった楽しみをキャッチするアンテナがあるだろ?

そのアンテナで、いろんな人から発信された「美しいもの」や「希望に満ちたもの」「喝采に値するもの」「勇気を与えてくれるもの」、そして「生きる力」といった「温かなメッセージ」を受け取っている限り、みんな若いままでいられる。

ただ、そのアンテナが働かなくなって、心が冷たくなってしまったのなら、たとえ20歳であったとしても、老化は始まってしまう。

でもね、アンテナが「温かなメッセージ」を受け取っている限り、人は“80歳という若さ”で死ぬことだってできるんだよ。

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2008年03月23日

「台湾ラーメン」で連載終了〜


台湾ラーメン2.JPGバタバタしてて忘れていた月イチ恒例の『ゲームラボ』の「ソウルフード」連載の貼り付けコーナーの時間だよ。んで、この連載は、先月で終わってたんでしたー。突然、担当の人からメールがきて「来月は別のネタでお願いしまーす」ってことに。んで、今月からネットネタになってますこの『ラボ』の連載。ま、ソウルフード探さなくていいからネットネタのほうが楽だけど、なんか寂しい。。。このソウルフード連載、どっかでやりませんか〜。誰かやりたい人メールくださーい。単行本用の企画も考えたので〜。というわけで、全然最終回っぽくない「台湾ラーメン」の原稿、どうぞ。

今、なにげにソウルフードがブームのようで、東京でも地方食を供する店が増えてきた。以前紹介した「富士宮やきそば」は新たに専門店ができたし、福井のソウルフード・ソースカツ丼を出す店などは、都内でもけっこう散見される。ま、とはいえ、東京には絶無と言われているソウルフードも少なくない。例えば、北海道は根室で愛されている洋食「エスカロップ」や、ジャガイモとオカラを混ぜて揚げた埼玉の「ゼリーフライ」など、その名前は有名でも都内で食べるのはまず無理とされるものもたくさんある。今回、取り上げる「台湾ラーメン」も、そんな東京絶無ソウルフードのひとつであるはずだった。
 この「台湾ラーメン」。名古屋だけで食べられる謎のラーメンとして有名で「名古屋なのになぜ台湾?」などと疑問山積の案件だったのである。
しかし、出会いは突然やってきた。
ある日、何気なく東急沿線のとある街を歩いていると、普通の中華屋の店頭黒板に「台湾ラーメン750円」と書いてあるのを見つけたのである。ただ、これが本当に名古屋のソウルフードであるところの台湾ラーメンなのかは、よくわからない。そこで、とりあえず店に入って食ってみることにした。
「この台湾ラーメンって、名古屋でよく食べられるヤツですか?」
 で、注文するときにこのように訊いてみたのである。我ながらソツがない。
「ん? 名古屋? あー、麺は平べったいヨ」
「は?」
「きし麺に似てますヨ」
「はぁ」
 どうもここの店員は本場の人のようで、意思の疎通が上手くいかないのであった。それで依然としてその正体のわからぬまま待つことおよそ10分。ようやく出てきたラーメンは、麺の上に挽肉が乗っておるのが印象的な風貌。そして、たしかに店員の言うように面が平たい。あと、味が薄い。鶏がらのさっぱり系といえば、そんな感じだが、今まで食べたラーメンのなかでも指折りの薄さである。味が濃そうな挽肉が乗っているのに、こんな薄いとは驚きである。んで、総体的な感想としては「眠たい味」というところだった。さて。果たしてこんな眠たいラーメンを名古屋人は好んで食べるのだろうか。そのへんの事情を訊くために、名古屋市役所に電話してみた。
「これは名古屋市にある中華屋さんが作られたものです。台湾の方が作られたので、この名前が付いたようです」
なるほど。台湾人が作ったから「台湾ラーメン」というわけか。
「その特徴はどういうものですか?」
「辛いです。あと挽肉が乗っています」
 実にシンプルな回答である。でも僕が食べたのは、全然辛くなかったけど、どうなのであろうか。また名古屋においてこの台湾ラーメンがどれほど浸透しているのかと訊くと、「いくつかのお店で見かけますが、味噌カツとか海老フライと比べると……」とのお返事。果たしてこのような状況で、台湾ラーメンを名古屋のソウルフードと呼んでいいのだろうか。どうなのであろうか。
 何かと「どうなのであろうか」という結果になったのだが、僕が食べたのが台湾ラーメンであるかの判定だけは行ないたい。そこでネットで画像検索してみると、台湾ラーメンの写真が50枚ほど出てきたので僕が食べたのを照らし合わせてみた。結果……たぶん同じですね。味は、本場のヤツはもっと辛いはずだけど、挽肉も乗っているのでおそらく台湾ラーメンです。ただ、名古屋の人が食べるとガッカリするだろうなぁ。でも、東京に食べるソウルフードとは、往々にしてこのようなガッカリ要素を持っているものなのだと今回は結論付けておこう。

(CAP)
僕が東京で食べた「台湾ラーメン」。ちなみにもともと「賄い飯」として開発されたため、今でも「小どんぶり」で供する店が多いという。

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2008年02月20日

蜂の子とざざ虫とカエルさん


カエル.jpg月一恒例の『ゲームラボ』連載貼り付けコーナーですよー。今月は、虫を食ったのでした。ムシシシ。

 今回、ご紹介するソウルフードは「蜂の子」である。「蜂」の「子」というわけで、要するに蜂の幼虫。虫である。この虫を食べる文化が信州を中心に存在するというのは、耳学問としては知っていた。イナゴをはじめ、この蜂の子、あと「ざざ虫」なんてのも食べるという。この信州において虫を食べるというのは、海がないことに遠因があるようだ。日本人は、そのたんぱく源を主に魚から採ってきたわけだが、山中にある村落では新鮮な魚をなかなか食すことができない。そこで、虫や田んぼのカエル、ヘビなどをタンパク源としていたわけだ。
 ただ、こういった教科書的なお話は、あくまでも歴史のそれであって、今の社会には当てはまらないものだと思っていた。もちろん郷土料理店などには、こういったメニューが並んでいるであろうが、今の若い子たちにとって虫がソウルフードと呼べるような身近なものであるとは思ってなかった。でも、身近みたいなのだ。
「虫ですか。よく食べてましたよ。イナゴなんか普通のオヤツ感覚で食べてましたし、蜂の子は、ご飯にかって食べてました」
 たまたま知合った26歳の長野出身の女の子はこう話していた。ちなみに、ご飯に“かって”食べるというのは、かけて食べるという意味の信州言葉のようだ。
「じゃあ、やっぱ虫ってのは、あなたにとってのソウルフードなの?」
「そうですねぇ。田舎を思い出す懐かしい食べ物ですかね」
 ほぉ。これはソウルフードだ。この企画では、歴史や名前だけあっても地元の人が親しんでいないものは取り上げない方針だったのだが、若い信州娘が食べていたとあれば、チャレンジしてみたい。そこで、池袋にある「木曽路」という店に赴いてみることにした。
 ここは、都内でも虫が食べられることで有名な店で、イナゴはもちろんのこと、蜂の子にざざ虫も食べられるという。さっそく店内に入ってその3品をオーダー。ただ、これだけだとあまりにも腹持ちが悪そうなのでカエルも頼んでみた。
 まず、カエルさん到着。ゲッ。まんまである。カエルそのまんまの姿である。頭はなくて脚だけの姿だけど、その脚が平泳ぎがたいそう上手そうな脚なのだ。ちょっとひるんだけど食べてみましょう。ガブリ。
 うーん。これはまさに鶏のササミですね。塩加減もいい具合で美味しいです。次に来たのはイナゴさん。これは食べたことあるから安心ですね。うん。佃煮の美味さそのままって感じですね。美味しいです。で、次に出てきたのが蜂の子。見た目はカブトムシの幼虫のすごく小さいヤツって感じでしょうか。ちょっと気持ち悪いけど食べてみると、甘い。甘くて美味しいです。ご飯のお供って感じはしないけど、全然食べられますね。ふむ。
 で、意外と虫も平気だなぁと思っていたところにやってきたのが、ざざ虫だったんですが、これは強敵でした。もう、芋虫そのまんまって感じで、僕が川釣りをするときに捕まえる川虫とそっくり(というか同じ)。うーん。付け合せの大根おろしの白さが、ざざ虫の黒さを強調してより見た目のインパクトがアップしてるんですが、気合を入れて食べました。うん。味はですね、やっぱ佃煮の醤油味ですが、よく言えば「野趣溢れる」、悪く言えば「ちょっと生臭い」って感じですかね。全然食べられるけど、イナゴみたいに香ばしさがあるほうがいいですね。うーん。ご馳走様でした。
 さて、食べて終わりというのもアレなんで、長野市に電話してどれくらい食虫文化が根付いているのか訊いてみたところ「虫を盛んに食べるのは、長野県でも南の方。伊那市とか飯田市ですね」とのことなので、伊那市に電話してみたら、人の良さそうなお爺さんが説明してくれました。
「まあ、虫はたしかに身近ですよ。なかでもいちばん身近なのは、やっぱりイナゴですかねぇ。普通のスーパーで1パック300円くらいで売ってますよ。蜂の子は年々高くなってきていて小さな缶詰が1000円とか2000円はしますね。採る人が少なくなってきてるからねぇ。あと、ざざ虫は、もうだいぶ少なくなってます。市内でも、普通の青虫なんかをざざ虫として売ってたりするけど、あれは本物じゃないっす。本当のざざ虫が採れるような清流が少なくなってるからねぇ」
 なるほど。虫を食べるという文化も、環境破壊とともに衰退しているようだ。郷土の自然を大切にするという意味からも、この文化は守ってもらいたいと思うのでありました。

(CAP)
写真はカエルさん。ご覧のように往時の姿を充分に偲ばせるスタイルで登場されます。でも美味しいよ。

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2008年01月16日

肝油ドロップは富山のソウルフード?


肝油SHUKUSHOU.JPG『ゲームラボ』の連載貼り付けコーナー。今月は「そういや僕のソウルフードは肝油ドロップですよ」と、この連載の担当氏が言い出したので、あの懐かしい味について調べてみました。ま、結局は単なる思い込みだったのですが、このとき以来、我が家では肝油ドロップを愛用してます。これでおばあちゃんの乾き目も治りつつあります。今、改めてみんなにオススメしたいですね。肝油。いいですよ。これ。

 今回、取り上げるのは「肝油ドロップ」である。「あー。知ってる! 知ってる! 幼稚園のときにもらってた!」。話をふると、だいたいこんなリアクションが返ってくるあの懐かしいドロップである。
なぜこれを取り上げるのかというと、「そういえば、ウチの故郷である富山のソウルフードは肝油ドロップですよ」と、この連載を担当している『ゲームラボ』のK氏が教えてくれたからである。肝油ドロップがソウルフード……。あのドロップをみんな熱愛して貪り食べているのだろうか。なんだか今ひとつイメージが湧かないが、懐かしいので調査してみることにした。
まず、肝油ドロップとは何たるものかってことを、改めて調べてみた。すると「肝油といえばサメの油」という認識だったのだが、これはずいぶん昔の話であったことがわかった。なんでも戦前には、サメやタラ、ブリといった魚の肝臓から絞り採られた油を濃縮して使っていたようだが、今では人工的に作られたビタミンAとビタミンDを原料に作られているという。ふーむ、そうなのか。実は、肝油ドロップは何かの薬だとは知っていたが、ビタミンA&Dの補給薬だとは正直知らなかったです。はい。ちなみに、妊婦さんやお年寄り、そして発育期の子供の栄養補給に効果的らしいですよ。
さてさて。そんな「薬」である肝油ドロップに、ソウルフードというような地域性が果たして存在するのだろうか。疑問はより深まったが、とりあえず富山市役所に電話してみることにしよう。
「肝油ドロップ……ですか。えーと、それが富山市内でたくさん食べられている? ち、ちょっと待ってくださいね」
 電話口に出たお姉さんは、かなり困惑気味である。それで、それからあちこちの部署に聞いてまわってくれていたのだが「そういった事実があるかどうか、わからないですね。すいません」とのことだった。富山の人はとても親切ということはわかったが、肝油のことはわからなかったわけである。
 というわけで、次は肝油ドロップの製造元である河合製薬に訊いてみることにした。ちなみにこの会社は東京にあり富山にあるわけではない。だけど、富山で特別に普及していることってありませんかね?
「もちろん地域差はございます。営業担当者がどこを回ったなどの関係で広く利用されている地域と、そうでないところはございます。しかし、とりわけ富山県だけで普及しているということはありませんね」
 なんでも営業の関係で地域による差は生じても、それが県単位の差に及ぶということはないようだ。
 ふむ。県サイドとメーカーが「わからない」というのであれば、これはソウルフード化してない可能性が高いだろう。では、最後になぜK氏が肝油を富山のソウルフードと思ったのか訊いてみた。
「富山では、幼稚園だけでなく小学校の給食の後でも肝油を食べるんですよ。だから、こっそり忍び込んで食べたりと、他県の人よりも肝油の思い出が多いんです。この小学校まで肝油を食べていたという話をすると他県の人にすると必ず驚かれますし、富山の人間で肝油を食べたことのない人もいないですから、てっきりソウルフードかと思っていたんですが……。思い込みなんですかね」
 ふむ。おそらく思い込みだ。でも、ソウルフードなんてのは、郷土料理のように出自がはっきりしていないものも多い。いわば思い込みや一方的な思い込みから発生する類のものだ。だから、富山では肝油がソウルフードってこともでいいと思うよ。Kさん。


ソウルフー度 ★

(CAP)
これがカワイ肝油ドロップ。今でも街の薬局で普通に買えます。100粒入りのが600円くらいでしたね。30年ぶりくらいに食べましたが、懐かしさに感激。美味しいです。

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2007年12月16日

タレカツ


タレカツ.JPG毎月恒例のソウルフード紹介コーナー。今回は、新潟の「タレカツ」です。こちらのブログの方が、新潟出身でタレカツについて聞いてみたところ「僕にとってソウルフードです」と教えてくれたのでした。神保町にあるので、みなさんも一度行ってみるといいかもですよ。


先日、神保町を歩いていて「新潟カツ丼『タレカツ』」なる幟を発見したとき、実に興味深いと思った。
カツ丼といえば、一番ポピュラーなのは、カツを卵でとじたやつ。これに次ぐのは、昨今の地方食ブームで名を上げた「ソースカツ丼」である。だが、このタレカツなるものは、そのどちらでもないようだ。ふむ。これは食べてみなければなるまい。
そこで、さっそく店に入って注文。そして、待つこと約5分で運ばれてきたのだが、その姿を見てちょっと驚いた。
「ご、ご飯が見えん……」
 ま、普通のカツ丼でもご飯は見えないが、ちょっと肉をめくればすぐにご飯だ。しかし、このタレカツは、カツが合計4枚もドドドと乗っており、その4枚をめくらないとご飯にたどり着かないのだ。「どうやって食べれば……」と躊躇したが、とりあえず目先のカツから攻略していくことにした。ガブリ。
「ほぉ。なんか醤油風味のいい味ですね。香ばしいしカツは旨い」
 最初の感想はこれである。ただ、やはりカツは揚げ物なので、これを連続で食べ続けるとちょっと飽きる。だから、4枚のカツをなんとかめくってご飯を食べるのだか、これは想像通り食べにくいです。あ、あとこの丼の中には、ご飯とカツしかないのである。キャベツとかタマネギとかご飯とカツの関係を中和してくれる野菜はいっさいない。カツとご飯だけの世界である。
 ふーむ。飽きます。ちょっと飽きますね。あと、35歳の僕にはカツは4枚も要らないです。というか、ご飯とカツのバランスが悪くないかなぁ。ご飯が足りないORカツが多すぎです。ゲフー。久しぶりにちょっと胃がカツだらけになって体力を消耗した感じになってしまったのでありました。
 はてさて。たまたま勢いで食べたこのタレカツなるもの。果たして本当に新潟のソウルフードなのだろうか。まさか新手の「ソウルフード詐欺」ってことはあるまいなぁ。さっそく、新潟市役所に電話して訊いてみた。
「『タレカツ』……ですか?」
 やっぱり知らないのだろうか。
「その名前が一般的なのかどうかはわからないですが、たしかに新潟のカツ丼といえば、揚げたカツに甘辛い醤油タレを付けたものを乗せたものですね」
 あらら。やっぱり知ってましたか。
「ですから特別に珍しい食べ物であるという認識はありません。ただ、近年、他県の人から『新潟のカツ丼は変ってますね』と言われるようになって、新潟独自の食べ物なのかなぁと感じるようになりましたが……」
 ふむー。これは完全にソウルフード認定であろう。疑ってすいません。
 ちなみに、このタレカツという名前は、新潟市内でも有名な「とんかつ政ちゃん」というお店が他県のカツ丼と区別するために名付けたそうだ。また、新潟出身の人からこんな話も聞いた。
「我が家では夕食に豚カツが出ると、その日は普通にソースをかけて食べるのですが、残った分は甘辛いしょうゆダレに漬けられて翌日のお弁当に入れられました。私はずっとこれを母親が考えた“残り物メニュー”だと思っていたのですが、今から考えるとそうではなかったんですね。タレカツというものを、外で食べた記憶がないのでどれくらいポピュラーなのかはわからないですが、少なくとも私にとってはソウルフードでした」 
 このようにタレカツは、想像以上に新潟の人の生活に根付いた食べ物であったのである。ちなみに、なぜこういった食べ方が新潟に広まったのは、よくわからなかった。ただ、新潟県は、昔から豚肉をよく食べる土地柄のようだ。


ソウルフー度 ★★★★

(CAP)
「新潟カツ丼タレカツ」のカツ丼・790円。ちなみに新潟市内では、卵でとじた普通のカツ丼もあるそうで、タレカツ一辺倒というわけではないようだ。

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2007年11月16日

ケンタッキーが撤退?


唐揚げ.JPGというわけで『ゲームラボ』で連載している「ソウルフード原稿」を毎月貼り付けているコーナーの時間ですよー。今回は、珍しくタレコミ情報がもたらされたので、それを検証してみたのでした。

 前回この連載で「佐世保からマクドナルドが撤退した」という噂について書いた。ま、結局は、単なる噂だったのだが、この原稿が呼び水になって新たに「福岡からケンタッキーが撤退した」という情報がもたらされた。情報提供者は、『ゲームラボ』編集部のA氏。なんでも福岡出身のA氏は、「福岡の人は、唐揚げが大好きなんでケンタッキーが撤退したんですよ! この話はガチですよ!」と、力説しているという。ほー。そもそも「福岡県人が唐揚げ好き」という話も初めて聞いたなぁ。じゃあ、せっかくなんで、今回はこのタレコミ情報を検証してみることにしよう。
 んで、さっそくケンタッキーのお客様サービス係に電話してみた。今回は、寄り道なしでいきなりの本丸攻めである。
「あのー。福岡からケンタッキーが撤退したって噂を聞いたんですが……」
「撤退……ですか?」
「ええ。福岡は、もともと唐揚げを愛好している土地柄ゆえケンタッキーさんの売上が伸びずに撤退とか……ないっすか?」
「そんなことはありませんねぇ」
「範囲を広げて九州全体でも?」
「ないですねぇ。唐揚げを愛好する土地柄ゆえ、私どもが撤退したということはありません」
 はー(笑)。はい! おしまい! と思ったのだが、いろいろ調べを進めると、たしかに福岡を含む九州北部では、唐揚げが古くから愛好されていることがわかってきた。なかでも、大分県の中津市は、その唐揚げ大好き度が最上級レベルのようで、まさにソウルフード化しているというではないか。そこで調査対象を中津にシフト。市役所に電話して、なぜ唐揚げなんてポピュラーな食べ物がソウルフード化しているのか訊いてみた。
「たしかに、この中津では唐揚げはすごく身近な食べ物です。ただ、その理由は定かではないんですよ。特に地鶏の産地というわけでもありませんしねぇ」
 このように理由はよくわからないが、唐揚げが大好きということは確からしい。ちなみに、味の特徴は「しょうゆベースのニンニク風味ですね。ただ、店によって味は全部違います」とのこと。また、街のあちこちに「唐揚げの専門店」があるというのが興味深い。
「テイクアウト専門のお店が、街のあちこちにあります。運動会やちょっとした集まりにこういうお店で唐揚げを買ってもっていくという風習は古くからありますね」
 中津市役所では「からあげマップ」(「中津 からあげマップ」で検索すれば見られる)なるものを作っているのだが、これを見ると駅の周辺や幹線道路に、唐揚げ専門店が点在しているのがよくわかる。たしかに、これはソウルフードですわ。最後にケンタッキーが撤退したという噂について訊いてみた。
「ああ、その話はよく聞きます。たしかに、ここ中津では10年以上前にケンタッキーが、本当になくなりました。ただ、ビルの契約など諸事情が原因だったはずで、売れないからではないと思います。でも、それから10年以上もできなかったわけですから、“売れていた”ということでもないかと思いますが」
 このように「売れないから撤退」というのは、唐揚げを愛する市民熱が作り出した、あくまで噂であるようだ。
 はてさて。今回は、何も食べないうちに原稿も終盤戦。ただ、中津市役所の人に「東京で中津の唐揚げが食べられる店はありますか?」と訊いてみても「大阪の物産展では、中津の唐揚げが出店されることもあるんですが、東京はわからないですねぇ」とのことで、いろいろ探したが、発見できず。そこで、ネットで若者たちからの支持を集めていた「海峡」なる居酒屋の唐揚げを食すも……デカイだけでした。


ソウルフー度 ★★★

(CAP19W×4=76W)
写真は、ネットで評判の「海峡」なる居酒屋のデカイ唐揚げ。東京で中津の唐揚げ食べられる店を知っている人がいたら、ぜひ教えてください。

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2007年10月16日

佐世保バーガー


佐世保バーガー.JPG更新頻度が月に4〜5回アベレージのこのブログでは、かなり出現頻度の高いコンテンツになってきたソウルフード原稿紹介のコーナーですよ〜。というわけで、今月は「佐世保バーガー」を食べたのでした。このときは「佐世保からマクドナルドが撤退した」という噂の検証もしたんですが、この後、ケンタッキーが福岡から撤退したとか、「フランチャイズの撤退伝説」がいくつか寄せられて、目下それらも捜査中だったりするんです。というわけで、全国各地で「オイラの地域からは●●が撤退したよ〜」という噂を知っている人は、ぜひ教えてくださいね。あ、あと今回思ったけど、ハンバーガってすごく撮影するのが難しいですね。なんでだろ。


今回、とりあげる佐世保バーガーには、こんな噂がある。
 なんでも「佐世保は、日本で唯一マクドナルドが撤退した街」だというのだ。
 ふむ。実に興味深い。
1950年頃、米軍基地がこの地にあった関係で、日本で初めてハンバーガーが伝えられたとされる街・佐世保。それ以来この街では、50年以上に渡って営まれてきたハンバーガー屋もあるらしく、まさにハンバーガーは、この街の歴史と共に歩んできたものらしい。
そのため、マクドナルドが出店してきたときも、佐世保市民は今まで街にあった店に通い続けたため、ついに撤退した――。こんなところが、その噂の概況だ。
いい話だ。
最近、どこの街にもチェーン店が進出し、その街に古くからあった店舗が撤退している状況が日本の各地で起こっている。こういう状況は、日本文化の消失であるし、実にもったいないことだと常々思っているので、この佐世保の噂が本当なら、ぜひ全国に広めたい話だと思った。
そんなわけでこの噂にビビットに反応したのだが、その前に食べてみなければなるまい。
やっぱりこの手の話は、実際に旨くないと説得力がない。そこで本当にマクドナルドも逃げ出す旨さなのか確かめるために都内でも食べられるところはないもんかと探してみると、あった。ありました。『ZATS BURGER CAFE』という佐世保バーガーのお店があることがわかったので、さっそくこちらの中野ツタヤ横店に行ってみた。
 平日の午後1時に入店。ランチ時ということもあって15人くらい入れる店内(2Fもあったようだが見てません)は、ほぼ満員。
 んで、カウンターで佐世保バーガーのレギュラーサイズ680円をオーダーして、ドリンクを飲みながら待つこと15分、やっとハンバーガー登場。
「ギュッと潰して食べてください」
 店員さんは、こんなことを言いながらハンバーガーを持ってきた。なんでも上から潰して、肉汁とソースをからめてパンに染み込ませて食べるのが佐世保流なんだとか。ほお。わかりました。ギュー! んでもってパクッ! 
 ンー! これは旨い!
 いや、これはマジで旨いッス。国産牛100%のビーフはジューシーだしタマネギやトマト、レタスという野菜もシャキシャキ。それと、卵が入っているんですが、この目玉焼きがウンマイ! あまりに旨くて、15分くらい待ったのに5分も経たずに食べちゃった。オイシー!
 この旨さが普通で、こんな店が各所にあるならマクドナルドが尻尾を巻いて退散したという噂も、なかなか真実味を帯びてくるなぁ。ふむふむ。さっそく、佐世保市役所に電話してみよう。まず、佐世保バーガーの定義なんてのから訊いてみた。
「これは、注文を受けてから作る。そして地元の食材を使うといったところでしょうか」
 あー。つまりタマゴが入っているのが佐世保バーガーとか、そういったレシピの問題ではないんですね。
「そうです。そうです。それで実は、今年の3月から佐世保バーガーは認定制になったんです。佐世保観光コンベンション協会というところが、先ほど申しましたような要素を満たしているかをチェックして、それに該当したところを佐世保バーガーとして認定しているんです。今、現在認定されている店舗は全部で25になりますね」
 へー! 実際に「佐世保バーガーMAP」と検索してもらえればわかるのだが、ここには認定されたお店が色々紹介されているのだが、たしかに形だけでも2つとして同じものはない。「味もサイズも違ってみんなウマい。」なんてコピーが掲げられているが、まさにこの言葉通りなのだ。
最後に気になる噂について訊いてみた。
「マクドナルドですか……。えーと、こちらの商店街の中心部で、今でも営業されてますよ」
 ハイ! 噂は噂でした! ハハハ(笑)。でも、佐世保バーガーの心意気や魅力は充分にわかったので、満足であります。いつか佐世保に行って、食べまくりたいと思うのでありました。おしまい。

(CAP)
『ZATS BURGER CAFE』の佐世保バーガー。680円。ファストフードと言われるハンバーガーですが、作り置きをしない佐世保バーガーはちょっと待ちます。でも、断然旨いんです!

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2007年09月17日

カレーうどん


カレーうどん.JPG毎月恒例のソウルフード連載の貼り付けコーナー。今月は、名古屋のカレーうどんだす。これは、飲んだ後にカレーうどんを食べるという、名古屋の奇妙な風習をネタにしたもんでしたよ。あー、ちなみにこれの次の号では、「佐世保バーガー」をやったんですが、そろそろネタストックが切れてきた〜。都内で食べられる(これ肝心!)地方のソウルフードネタがあったら教えてください。教えてくれたら、いっしょに食べに行きます! もちおごります!

もう10年くらい前の話だけども、名古屋に行って酒を飲んだ後、地元の人が「〆(しめ)にカレーうどんを食べましょう」と言ってきた。
 〆にカレーうどん。
 何を言っているんだと思った。
 しかし、名古屋には夜遅くまでやっているカレーうどん屋がたくさんあって、赤ら顔のおじさんたちが、ハフハフ言いながら食っていたのである。
「名古屋では、飲んだ後にカレーうどんを食べるのは、わりと普通ですよ」
 僕が驚いているのを見て、その人はちょっと自慢気にこう言ってたっけ。
 そんなことを、こないだカレーうどんを食べているときに思い出したので、今回のテーマは、「名古屋のカレーうどん」であります。ただ、名古屋で〆にカレーうどんを食べたことは鮮烈に覚えているのだが、どんなカレーうどんだったかはさっぱり覚えていない。
 まずは、食べてみねば。
 というわけでさっそく調べてみると、名古屋の有名なカレーうどんチェーンに「若鯱屋」というのがあることがわかった。有難いことに東京にも数店舗あったので、家の近所の用賀店に赴いて食ってみた。
 カレーうどん。790円である。
 注文してからどんなカレーうどんか想像してみた。カレーうどんなんて、どこで食べてもたいして変わらないと思っているかもしれないが、それは大間違いである。というのは、高校まで京都で暮らしていた頃、カレーうどんといえば、うどん玉にカレーをかけただけのものだった。夕飯にカレーライスが出た次の日の昼ご飯は、カレーうどん。残ったカレーをうどんにかけてカレーうどん。これだった。
 だから東京に出てきて、カレーをうどんの汁で溶いたのを食べたときは、驚いた。最初、なんか抵抗あったけど、考えてみたらこっちの方が、カレーうどん用に仕事している分、偉い気がしてきた。両方食べた感じでいえば、汁で溶いているほうが品はいいですな。ただ、カレーをうどん玉にかけただけのやつも、ジャンクな感じがして好き。ま、どっちもそれなりに好きです。
 果たしてここのカレーうどんはというと、東京スタイルだった。さっそく、食べてみよ。ズルズルズル。
 アチ! 
 カレーうどんは熱いのである。アチチ!
 アチチいいながら感じるのは、なんと言っても麺の太さである。このカレーうどん、麺が異常に太いんである。極太だ。ただ、別に食べにくいわけでもなく、上手にカレー汁と絡んでなかなかいい感じだす。あと、細かく刻んだ油揚げが入っているのだが、これがいい感じにカレーを吸って旨い。
 ふー。ま、普通に美味しかったですかね。あと、夏にカレーうどんを食べると、大量に汗をかきますな。こんだけ汗をかくと、酔いも一気に醒めそうだ。このあたりが、名古屋人が〆にカレーうどんを愛用している理由なのだろうか。若鯱屋に電話して聞いてみた。
「たしかに、お酒の後に召し上がる方も多いです。ただ、なぜ〆にカ召し上がる方が多いのかは、わかりかねます」
 二日酔いに効くからですかね? ネットで、カレースパイスの中の“うこん”が二日酔い予防に効果があるという説を見つけたんですが。
「ふふふ(笑)。初めて聞きました」
 じゃあ、名古屋人がカレーうどんを愛する理由とか、ご存知ですか?
「いやー。そこまでは……」
 はい。というわけで、なぜ名古屋人が〆にカレーうどんが好きなのかは、わからずじまい。その後も色々調べたけど、わかりませんでした。ただ、「佐世保の人は、〆に佐世保バーガーを食べますよ」なんて情報は教えてもらえた。要するに「そこにあるから」というのが、答えなんでしょね。

ソウルフー度 ★★★

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2007年08月14日

富士宮やきそば


富士宮やきそば.JPG毎月、恒例のソウルフード原稿貼り付けコーナー。先月は、富士宮やきそばについて書いたのでした。やきそばって、今までお祭りくらいでしか食べなかったけど、たまに食べると美味しいね。ビールのつまみにもいい感じだす。そんなやきそばのなかでも、この富士宮バージョンは、一回食べる価値ありですよ。未食の方はぜひぜひー。

「B−1グランプリ」なるイベントをご存知だろうか。これは、全国のB級グルメが一同に会して王座を競い合うという年に一度の祭典で、これの第2回大会が、6月2日、3日の2日間に渡って行なわれた。その結果、グランプリには、静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」が選ばれたのである。ちなみに、この前年に行なわれた第1回B−1グランプリで優勝したのも、この富士宮やきそばだった。そう、富士宮やきそばは、なんと2連覇しているのである。スゴイのである。
 これは食べてみなければなるまい。
 猛烈にそう思ったのだが、現地に行っている時間もないので都内で食べられるところを探したら、あった。ありました! しかも、地元の人が食べてみて「これは本物!」と太鼓判を押している店である。
 さっそく行ってみた。そこは、学芸大学駅から歩いて3分ほどにある「がんそ」という店なのだが、食べるスペースがまったくなかった。テイクアウト専門店なのだ。さっそく富士宮やきそば450円を買って後、近所の公園に分け入って食べてみた。
 ズルズルズル。 
……ムムム!
 本音を言うと、やきそばなんかどれもそんなに変わらないと思っていたのだが、一口食べただけで違いがわかった。モッチリなのだ。麺がモッチリモッチリ。普通のやきそばは、麺はモソモソって感じだが、富士宮やきそばは、その倍くらいかみ応えがある感じだ。モチモチ。あと味はソースだけでなく、魚の出汁粉がかかっていて、風味がいい。ふむ。旨い。旨いです。
 ただ、このやきそばの、どのあたりが「静岡」で「富士宮」なのかさっぱりわからなかった。富士宮の人の肌がモッチリだからだろうか。そんなわけないので、そのあたりの事情を、富士宮市の役場に聞こうとしたところ「ここではよくわからないので、富士宮やきそば学会で聞いてください」と言われたので、その学会なるところに聞いてみた。
 まずなぜあんなにモッチリしているのか。
「これは麺の製法が違うからですね。普通のやきそばの麺は、蒸した後に茹でるんですが、富士宮の麺は、蒸した後に湯通しせず油でコーティングするから水分が少ない。だから、コシがあるんです」
 なんでも、この麺を作った富士宮にある製麺所の会長さんが、台湾で食べたビーフンのような食感の麺を作りたいと思って考案したのだという。そしてこの麺が人気になり、富士宮市にある3軒の製麺所は、どこもこのモッチリ麺を使っているようだ。だから、富士宮市には200軒ほどのやきそば屋があるのだが、どこでも食べてもモッチリモッチリ。細いとか太いという差はあるようだが、どこも同じモッチリだという。
あと、B−1グランプリのHPに「2000年に富士宮やきそば学会ができるまで、門外不出だった」と書いてあった。門外不出とは、これ如何に?
「それは富士宮の人が、このやきそばを特別なものだと知らなかったからですね(笑)。ただ、東京に出た人などが『富士宮のやきそばって変わってるよね』って言い出して、じゃあ町おこしに使ってみようということで、2000年から他の地方に向けてPRし始めたわけです」
 つまり門外不出というよりも、あまりにも当たり前の食べ物過ぎて、その特別さに誰も気づかなかったというわけだ。いい言葉だ、これ。「当たり前過ぎて、その特別さに誰も気づかない」というのを、ソウルフード界の金言にすることに決めましょう。はい。
あ、ちなみに富士宮やきそばブームに乗ってカップヤキソバも出ていたので食べてみたけど、これもモッチリしてました。モチモチ。



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2007年07月14日

黒はんぺん


静岡おでん.JPG毎月恒例のソウルフード原稿、貼り付けコーナー。今月は、静岡の黒はんぺんであります。これは、静岡の講演にお呼ばれしたとき、SOHOしずおかの方がご馳走してくださったのでした! その節はありがとうございました〜。


みなさんは「はんぺん」の特徴を挙げろと言われたら何て答えますか?
「えーと、まず白い。あとは、ふわふわです」
 こんな感じでしょうね。@白Aふわふわ。はい、正解! んなの当たり前だと思うでしょうが、ある地域でこの質問をすると、まったく逆の答えが返ってくるんですねー。
「んとね、まず黒い。そして、歯ごたえしっかりです」
 その地域では、@黒A歯ごたえしっかり。これが正解となっているんである。んなバカな! それはどの地域だ? と憤懣した方にお答えすると、これは静岡なんですね。
 静岡では、はんぺんと言えば、黒いはんぺん。通称「黒はんぺん」のことを指すのである。というか、はんぺんといえば、黒くて当たり前なので、わざわざあっちの人は「黒はんぺん」と呼ばないらしい。黒がスタンダードなので、敢えて「白」と区別する必要があるときだけ「黒はんぺん」と呼ぶのだそうだ。
「東京に住んでいたときは、『黒はんぺん』と聞くたびに静岡を思い出しましたね。やっぱり静岡でしか目にしないので……」
 これは、静岡出身者に聞いた話だが、「黒はんぺん」と聞くだけで故郷を思い出すとは、なかなかのソウルフードぶりではないだろうか。
 いったいどんな味なのかとても気になるので、さっそく食べに行くことにした。
 今回は、この連載始まって以来、初となる遠征である。静岡まで行って食べてきた。ま、仕事で行ったときに先方様がご馳走してくださるとのことなので、喜んで行ってきたというわけなのだが、ま、そのあたりの事情は置いておこう。
 静岡駅近くの居酒屋でいただいた。
 おでんの中に入ってきた。ちなみに静岡のおでんは、汁も黒い。これはなんでも牛筋を入れて煮込むからだとか、出汁にしょう油を継ぎ足し継ぎ足し使うからとか、いろんな理由があるようだ。
「あ、だからはんぺんも黒くなっちゃったんですか」
「いえ違います。はんぺんが黒いのは、もともとですよ。黒いのは鰯のすり身が練りこまれているからです」
 なるほど。普通の白いはんぺんは、鱈など白身の魚を使うから白いわけだが、こちらは鰯なんかを使うから黒くなるというわけだ。じゃあ、黒さのカラクリもわかったところでさっそく食べてみよう。ガブリ。
「あー。これは……なんか食べたことがある味ですね。えーと、何だっけかな」
「鰯のつみれ……じゃないですか?」
「あ、それ!」
 そう。黒はんぺんは、鰯のつみれにそっくりの味なんである。ま、鰯が入っているから想定内の味だけれども、ほんとそっくりだ。あと、噂通り固い。白いはんぺんの持つ“ふんわり”さは皆無である。これは大人向けの味だなぁと思ったら、案の定「子供の頃は黒はんぺんがキライで、白はんぺんばかり食べていました」と言う人もいた。ふむ。わかる気がする。
 はてさて。では、どうして静岡のはんぺんだけが、鰯を入れて黒くなったのか――。そのあたりの事情を、静岡の市役所に電話して聞いてみた。
「はんぺんが黒いのは、鰯などが入っているからです」
 あ、それは聞きました。でも、鰯が取れるところって他にもあるじゃないですか。なんで、静岡だけ?
「静岡というところは、水産加工が盛んな街です。そういった現場では、どうしても魚の屑とか、従来なら捨ててしまうような部位が出てきます。それを上手に使えないものか――そういった摸索から出来た食べ物だと聞いていますが」
 へー。いいお話。要するに静岡人の無駄を出さない精神が生み出した食べ物だったわけですね。黒はんぺんは、まさに静岡人のグッドソウルが生み出した名産だったのだ。ちなみに、黒はんぺんのフライも食べたけど、こっちはオヤツっぽくて美味しい。機会があれば、フライもぜひどうぞ。

ソウルフー度 ★★★★★

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2007年06月21日

京都人のソウルフードは「餃子の王将」でしゅ


王将.JPGソウルフード連載の貼り付けコーナー。前回は、餃子の王将を取り上げたのでした。担当の人は「こんなのなしじゃない?」って言ってたけど、こんなのこそありだと思う。別にソウルフードだからって、珍しい食べ物である必要はないんである。チェーンでも、故郷を思い出せばオッケーなんである。ということで、ボクにとってのソウルフード王将を取り上げたというわけ。このとき、都内にある王将を食べまわったけど、やっぱ京都のほうが美味しいなぁ。

京都で育った僕のソウルフードといえば、「餃子の王将」だ。
餃子の王将とは、京都が発祥の中華料理のフランチャイズチェーンで、僕の家の周りにすごくたくさんあった。「すごくたくさん」という表現が幼稚すぎてどれくらいなのか伝わりにくいかもしれないと思って調べたら、なんと京都市内に37店舗もあった。
 ま、これでも伝わりにくいかもしれないが、感覚的にいえば、市内をクルマで走れば、大きな交差点ごとに餃子の王将って感じなんである。本当である。
 このように餃子の王将は、すごく身近な存在というだけでなく、すごく美味しい。おまけに安い。いつも頼む焼飯は400円だし、看板メニューの餃子に至っては、一人前で180円だ。
身近で安くて美味しいというファクターが重なり合って、餃子の王将は、多くの京都人にとってソウルフードになっている(と思う)。そんな王将には、ひとつの特徴がある。それは、店によってかなり味が違うので、みんな自分のお気に入りの店があるということだ。
 特に、時間と体力は余りあるけどお金はない中学生は、「どの店が旨いか」について口うるさい。「みんなで王将に行こう!」ってなったときに、「どこの王将にする?」なんて議論になったりすることもしばしばで、歩けばそこに王将があっても、30分くらい自転車をこいで目当ての店に行ったりする。
 こうして書くと単なる物好きの行動に見えるだろうが、僕も当時はかなり味が違うと思っていた。「今でもそうなのだろうか?」。ふとそう思って、餃子の王将の食べ歩きをしてみることにした。ただ、僕は今、東京に住んでいるので、生活圏内の4店に行ってみた。三軒茶屋店と水道橋店と渋谷店と新宿店である。どの店でも炒飯だけ食べてみた。で、結果をいきなり書くと、あまりわからなかった。
 がんばって4軒もまわったのに、「どこも普通に美味しい」と思った。中学のときの、あの鮮烈に感じた味の違いはなんだったのだろうか。僕はもう汚れてしまった大人なのだろうか。それとも、あれから餃子の王将に革命でも起こって、味が全然違わないようになったのだろうか。聞いてみた。餃子の王将のサイトから質問メールが送れるようになっているので、そこからお伺いを立ててみた。すると、ご丁寧に返事が戻ってきた。まず、肝心の店によって味が違うという点について。
「マニュアルに基づき均一した調理を提供できるようにしておりますが、料理人の味付け方、地域性、及び一部食材が異なる場合等があり、店によって味は異なります。従いまして、直営店やFC店といった要因ではなく、店個々によって味の違いがございます」
 やっぱり味は違うんだ。それも「違って当然ですよ」という感じで違うのだ。じゃあいちばん味に差が出るメニューは何ですか?
「炒め物です」
 そ、そうですか。そういや炒飯の具ってどこでも同じですか?
「基本は同じですが、一部食材の仕入れ状況等により変更する場合はございます」
 あ、やっぱり違うときもあるんですね。じゃあ最後に、どの店が美味しいのか教えてください。
「一番美味しい店舗は、本社として把握しておりません。味はお客様の好みにより異なりますので」
 そりゃそうですね。餃子の王将のアンサーは、実にクールなのだった。また、「関西風、関東風の味付けはあります」とのことなので、今度、京都に帰ったときに東京との味の違いを感じてみようかと思ったのでした。おしまい。

ソウルフー度 ★★★★★

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2007年05月23日

めどん


medon.JPG『ゲームラボ』の「ソウルフード」連載。新しい号が出たので、その前のやつを載せちゃおー。このときは、「めどん」なるものを食べたのでした。あ、今度は、こないだ静岡でご馳走になった「黒ハンペン」を書く予定ですよ!

北海道北見市のソウルフードに「めどん」なるものがあると聞いたとき、これは「何かあるナ」と思った。
「めどん」という言葉の響きが只者ではないからだ。意味がわかるようで、わからないところに曲者感が漂っている。
「めどん? それはきっと丼だろう。いや待てよ。うどんという可能性も否定できないナ。『め』は、メカブかなぁ。メカブうどんだ。いや、明太子かな? それは福岡か。北海道ならメロンか? 違うか」
 などと想像をめぐらしていたところ、それが目玉焼き丼だと知って驚いた。あまりにも何もなさすぎだ。目玉焼きを乗せた丼なんて。いや、でも単なる目玉焼きじゃないのかもしれない。きっと何かあるはずだ。だって「めどん」だもんなぁ。
 ということで、実際に食べてみました。
「そして私は北海道の北見まで飛んだ」と書きたいところだが、そんな時間も金もないので、仕事場に近い新宿三丁目まで地下鉄で行った。なんとこんな近場にめどんが食べられる店があったのだ。炭焼きジンギスカン「カムイ」。ジンギスカンのチェーン店だ。
 小奇麗な店内にズカズカと入り込みメニューを開くとたしかにある。「めどん 400円」。北海道北見市名物と添え書きもある。間違いない。
 いきなりこれだけを注文したい衝動に駆られたが、やはり分別ある大人としてジンギスカンのセットとビールを注文。そしてこれをつまみながら、近くを通りかかかった店長と思わしきお兄さんに、めどんについて聞いてみた。
「めどんって、北見の名物なんですか?」
「ええ。オーナーが北見の出身なんで、メニューに入っているんです」
「北見の人ってよく食べるんですか?」
「らしいですね。ま、半分くらいの人は知らないみたいですけど(笑)。でも北見の飲食店にはよくメニューにあるみたいですよ」
「へー。東京にいる北見出身の人が、ここにめどんを食べに来たりします?」
「ええ、もちろん」
 おお。なんかソウルフードっぽい。でも、目玉焼きを丼飯の上に乗せるだけなら、自分の家でもできそうだけど……。
「ああ、わかった! ジンギスカンのタレがかかっているんでしょ」
「いや、しょう油たれです。特性の」
「……」
 特性といってもしょう油のたれなら家で作れそうだけど……。まあ、いい。食べればわかる。ということでさっさと肉を平らげて注文すると、出てきましためどん。
 見たところご飯の上に目玉焼きが乗っていて、青海苔がかかっている。そして、しょう油らしきものがかかっている。以上だ。想像通りのビジュアルである。
 食べてみよう。
 一口。二口。三口。
 うーん。例えるなら、ご飯の上に目玉焼きを乗せて食ったような……というか、そのまんまである。まさに想像通りの味である。変わったところなど特にない。ま、目玉焼き丼は、あの『美味しんぼ』でも山岡さんが旨いと言っていただけあって、旨いのは旨い。でも、普通といえば普通だ。なんでこれが北見の名物?
 北見市の観光課に電話して聞いてみた。
「めどんですね。ありますけど……あまり北見の名物とは……」
 いきなり弱気である。
「板門店という焼肉屋さんのメニューにずっとあってですね。それなりには有名なんですけど、市民がみんな知っているというものではないと思いますね……」
 東京のいくつかの店で北見名物ってなってるんですけど。
「ああ、知ってます。おそらくなんですが、オホーツクビールを売ってもらっている関係で、めどんも北見名物とされたのでは……と思うんですが」
 オホーツクビールって北見名物なんですか?
「ええ、地ビールです。日本でも一番か二番目にできた地ビールで美味しいですよ」
 担当の人が元気になってきた。
「あと、もうすぐですね、塩ヤキソバで町おこしをするPRを始めるんですよ」
 なんで塩ヤキソバなんですか?
「北見では、ホタテとタマネギと麺を作る麦がとれるんです。それでホタテの煮汁を塩味のベースにして塩ヤキソバを作るわけですね。それとですね! 北見は人口が12〜13万人なのに焼肉屋が70軒以上ある焼肉の街なんです。それで冬には焼肉祭りをやったりも……(以下、続く)」
 というわけで、北見市ではめどんはそれほどソウルフードでもないようで、これからは塩ヤキソバを売り込みたいっすということでありました。ちなみに、多くのサイトや東京では「めどん」と表記されているが、北見では「目丼」と漢字表記するのが一般的であるようだ。

ソウルフー度 ★★

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2007年04月19日

ソウルフード連載


やきそば弁当.JPGそういやこないだから、連載を始めてたんでした。
『ゲームラボ』という、ゲーム機を改造したりする、ちとマニアックな雑誌があるんですが、そこで「ソウルフード」についての連載を先々月からやってます。

ま、地方にある変わった食べ物を紹介するコラムなんですが、せっかくなんで掲載号が店頭からなくなったらここに貼っていこうと思うので、暇な人は読んでみてください。あ、あと東京で地方限定食が食べられるよーなんて情報があったら、こっそり教えてくださいませ。ではではー。


今、ソウルフードが熱い!
どこで熱いかというと、僕の中で熱い。
なんで熱いのかというと、ネットを覗いていると「ソウルフード」に関する書き込みがとても多いからだ。そんなのを見ていて食べたくなってきたのだ。
ただ、書き込みが多いということは、僕だけでなく全体的に熱いのだろう。
例えば、去年は新潟のイタリアンというソウルフードに関する書き込みが多かった。
イタリアン知ってますか?
これは、やきそばのような麺の上にミートソースのようなものがかかっている、なんとも不思議な食べ物。でも、新潟では普通のショッピングセンターなんかで売られていて、老いも若きも日常的に食べるのだという。
 ただ、東京には、このイタリアンを出す店がない。
 ないけど、たまーに東京の物産展なんかに出店したりする。
 去年は10月、新宿の高島屋に「みかづき」というイタリアンを出す店が来ていた。そうすると、イタリアンを愛して止まない新潟出身者がこぞってやってきて食べるという。
 僕もそこに混じって初めて食べたけど、美味しかった。あと、一杯310円とかで安かった。こんなのそのへんで売ってたらたしかに買うなぁ。そう思わせてくれるシロモノなんである。
 んで、「デイリーポータルZ」というサイトにもこのイタリアンの記事が出ていて、それによると新潟のみかづきは、盆と正月にとても混雑するという。なんでかというと、地方から帰省した人が食べるからだそうだ。
 そして、みかづきの店長はこう力強く言う。
「ソウルフードですから」
 かっちょいー! 
 痺れました。
 こういうのがソウルフードであります。
 この新潟のイタリアンのように、ある地方ではもりもり食べられているのに、その他の地域ではその存在もあまり知られていないような食べ物。そして、東京なんかではあまり食べられないけど、帰省したときには、必ず食べたくなるような食べ物。郷土料理よりも、日常的でちょっとジャンクでフランクで、親しみやすいヤツ。
 そんなのがソウルフードなんです。
 そんなのを探して、食べて、あれこれ言う。
 ま、そんな感じの連載だと思ってください。
 さて、第一回目の今回は、「やきそば弁当」を食べたいと思う。
やきそば弁当(やきそばべんとう)とは、東洋水産が北海道のみで販売するカップやきそばである。通称「焼き弁」。1975年に販売開始。
ネット上の便利な百科事典『ウィキペディア』に、このように書かれている。
北海道は従来から東洋水産のインスタント製品シェアが高い地域だけに、カップ焼きそば製品シェアの50%近くを「やきそば弁当」が占めている。
 そんでこう説明が加えられていた。
「おー。やきそば弁当! なつかしー! カップやきそばといえば『やきそば弁当』っすよ! 本当っすよ!」
 北海道出身の知人に「やきそば弁当知ってますけ?」と聞いたら、唾を飛ばしながら興奮気味に答えてくれた。この興奮ぶりから推測して、ソウルフードであることは間違いないだろう。ちなみに「なんで『弁当』? 白米でもついてるんすか?」と聞くと「スープが付いてるんですよ。スープ」というお返事だった。
 スープをつけただけで弁当と名付けてしまうのは、図々しいんではないかと思ったが、まあいいだろう。さっそく食べてみることにした。下高井戸のローソンで買ってきた。北海道でしか買えないはずなのだが、その疑問は食べてから解決することとしよう。
 やきそば弁当の塩味にしてみた。パッケージを開くと、ソース、かやく、ふりかけといっしょにスープが入ってた。「マグカップ等にコンソメスープを入れ、麺のもどし湯を約150ml注ぎお召し上がりください」。こう書いてあった。その通りにして、やきそばとスープを作って食った。
「まー、あれだな。普通に美味しいカップやきそばだね。ちょっと僕には味が濃いかと思ったけど。あ、じゃがいもが入ってて、これがいいアクセントになってたね。北海道らしいしね。あと、スープがあるのは、意外と贅沢な気分になれますね。美味しかったです」
 こんな感想でした。なんで東京のコンビニで買えたのか、東洋水産のお客様相談係に電話して聞いてみた。
「東京のコンビニで売られているみたいですねー。ただ、こっちが直接卸しているわけでなく、コンビニのバイヤーさんとかが仕入れて売ってくださっているみたいです。だから、どこに行けば必ず買えるとか、いつまで売っているとかは私どもにはわからないんですよー。北海道ではたくさん売ってますけど」
 とのことだった。僕が東京のコンビニで買えたのは、単なる偶然なのかもしれない。というわけで、今なら都内でも探せば買えるかもしれませんが、買えないかもしれません。
 でも北海道では、絶対買えるので、旅行したときの夜食にどうぞ。話のネタにはなりますよ。
「やきそば弁当」ソウルフー度★★★(★5つが満点)


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2006年05月12日

僕のアーカイブ 第一回


バニー.jpg昔、使っていた古いパソコンをいい加減捨てようと思ってデータの整理をしてたら、大量の「書き捨てた」雑誌の原稿と、久しぶりの再会した。

んで、ま、このまま捨てちゃうのはちょっともったいない気がしたので、これから、僕が好きだった自分の原稿を放出していくことにしました。

どれも長文ですが、お暇な人は読んでみて〜。


つーわけで、「僕のアーカイブ」第一回は、
04年に『散歩の達人MOOK 東京夕暮れスタイル』に書いた「兎をめぐる冒険」
都内のバニーガールの店に行ってくるという、飲んだ勢いで決めたようなユルさが好きでした。


 僕と編集者のミヤタクン(仮名)は、九段会館のビアガーデンでビールを飲んでいた。
 もう二人のジョッキは空だ。もっと飲みたい。
でも、悪いけどウエイターのお兄さんに注文する気はない。バニーのお姉さんが来るまで注文しないのだ。
「バニーさん、来たよ」。ミヤタクンにこう告げると、彼は緊張した面持ちで「な、生二つ」と声をかけた。でも、それっきりうつむいたしまったのだった……。
 そう、彼は編集者のくせに口下手なのである。
「もっとバニーさんがたくさんいれば、話せるんですよ」
 ミヤタクンは自分の不甲斐なさをバニーさんのせいにしているが、まあそれも一理ある。この九段会館ビアガーデンのバニーさんは、多くても2〜3匹。それこそ客とバニーの比率は1対100くらいなんである。
「いくら見てるだけでも楽しいバニーとはいえ、もっとお話ししたいと思ってなにが悪いんですか! ドンドン!」
 ミヤタクンは酔うと机を叩く癖があるのである。 
「よし、わかった! 我々は、もっとバニーさんと親密になれる場所を探すのだ。おぉ、これぞ『兎をめぐる冒険』なのだ。なんか村上春樹みたいでカッチョイイのだ。そうなのだ。ドンドンドン!」
 僕は酔っ払うと、わけのわからないことを口走るのである。とはいえ、こうして僕たちの『兎をめぐる冒険』は始まったのだった――。
 しかし、僕はバニーガールのいる場所などまったく知らないのである。そこで、ネットで検索したところ、「ハイソなお嬢様バニーとエキサイティング新宿を思いっきり楽しもう」なんて謳い文句が書かれているお店を発見した。
 ハイソなお嬢様バニー……。
僕はミヤタクンを誘うのも忘れてその店に赴いた。
「LOFT101」というその店は、新宿のとあるビルの中にあった。ドキドキしながら入店すると、な、なんと八匹(たぶん)もの兎がいたのである――。
「それで感想としては、スゴク楽しかったッス。友達と二人で行ったんだけど90分で一人5千円ちょっととお得なんだよ。店はねぇ、カウンターとソファセットが二つで、そんなに大きくないんだけど、なんていうの、バニーさんとの適度な距離感が気持ちいいって感じだねぇ。んで、僕の前に座ってくれたバニーさんは、ゼブラ柄だったんよ。セクシーだったなぁ。ゼブラってわかる? シマウマだよ」
 なんて話を、その翌日ミヤタクンにしたら、彼は怒り出したのである。「なんで僕を連れていかないのだ」と。
「僕もバニーに会いたい! ドンドンドン!」と机を叩いて訴えかけてくるのである。そこでもうひとつチェックしておいたお店に二人で行くことにした。
 銀座にあるその店の名前は、「バニーズ倶楽部Zen」という。いかにも高級といった風情のビルの中にあり、普通ならビビって入れないところだが、今日は安心。というのもこのお店、ネットの定番情報サイト「ぐるなび」から割引クーポンを入手することができるのだ。これを出せば、7時半までなら1時間一人5千円なのである。
 豪華なエントランスで、上品なボーイさんに迎えられる僕たち。ミヤタクンは、電光石火の早業でプリントアウトした「ぐるなびクーポン」を見せていた。その姿は、まるで捜査礼状を出す刑事のよう。カッコイイぞ、ミヤタクン。
 さて、店内に脚を踏み入れてみると、50人ほどは入れるであろう大きなフロアの7割方がお客で埋っていた。土曜の銀座、まだ7時を過ぎたばかりだというのにこの賑わいである。最初に目についたのは、やはり全部で15匹くらいはいたであろうバニーガールの皆様。バニーの衣裳が黄色、ピンク、オレンジなどカラフルで店内はとても華やかである(後から知ったのだが、このお店では黒いバニーはベテランさんだけが着られる特別な色なんだとか)。
 そして、僕たちの席にも、ついにバニーがやって来た。黄色い兎である。それからの1時間が、どれだけ楽しかったのかは「いやー、僕、貧乏でよかったッスよ。小金でも持ってたら、毎日通っちゃいそうですもん」というミヤタクンの言葉で汲み取っていただこう。
 満面の笑みを浮かべ、店から出てきたミヤタくんは「これぞZEN的生活ですね」などと口走っていた。巷では、禅的生活なんてのが流行っているのだ。まあ、何の関係もないが、「そのとお〜り〜!」と僕も賛同した。バカだ。
 このようにバニーさんには、男を楽しいバカにしてくれる力があるようだ。だから冒険を終えてみても「とっても楽しかったです」なんて、小学生の遠足の感想みたいなものしかないのであった。でも、それで充分だと思うのである。みんなも黙って行くべし、なのである。村上春樹も、「羊より兎のほうが楽しそう」と口惜しがっているに違いない。


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