子どもが小学校のサッカークラブに入って半年ちょっと。我が家は、このサッカー以外になーんの習い事もさせていないから、余計にそう思うのかもしれないけれど、入れてよかったなとよく思う。友達も増えたし、身体もずいぶん丈夫になったし、土日の練習に行けば、ちゃんと疲れてくれる。
僕も毎週、土日、朝8時からの練習を見ているんだけど、他のパパ&ママや子どもたちとも仲良くなれて、大人の交流の面からも大事な存在になっています。そんな我がサッカークラブは、OBの大学生や高校生がコーチとして活動してくれているのですが、彼らが来年度から就職活動などで人数が減るので「パパコーチになってくれないか」と打診されたのでした。サッカーの部活経験はないけれど、大事なチームが必要としてくれるなら断るのも無粋だろうと、来シーズンからコーチをやります。はい。
それで、新しいことに挑戦するのであれば、本を読もうとしたのです。調べると「お父さんコーチのための本」といったものも数冊あるのですが、なかでも抜群によかったのが、この『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』。金言満載で、パパコーチの必読書ではないでしょうか。自分のためにも、大切な言葉を書き写しておきます。
《子ども、コーチ、そして父母の方も共通の認識を持つことが重要です。「スポーツには、勝つ時もあれば負ける時もある。勝ち負けは少年サッカーではそんなに重要なことじゃないよ」ということを》
《何のために子どもはサッカーをしているのでしょうか。何のために大人はサッカーを教えているのでしょうか。「勝つため」だけなのでしょうか。実際は、子どもが楽しくて、喜んでサッカーをしている方が体力がつきます。頭も使います。サッカーもうまくなります。けれども、厳しい練習に耐えることのほうが重要だと思っている大人の方が多いようです。歯を食いしばって汗を流しているのが選手で、それがスポーツ。子どももそうあるべき。どうも、そんなふうに思い込んでいるようなのです》
《小学生だからこそ、力の差があってもみんなが出られる。出ていいんだ。それを大人が教えてあげるべきだと思います。子ども一人ひとりを守る必要があると思います。よーく考えてみてください。少年サッカーに「勝たないといけない試合」なんてあるのでしょうか》
すごく大切なことなので、同じようなメッセージを3つ書き残したけれど、ここにあるように小学生のサッカーでは、「勝つこと」というのは最重要課題ではない。コーチを始める前にこう認識できたのは、とても大きなことだった。
《サッカーの先進国を見回すと、ブラジルもヨーロッパのどこの国でも小学生年代の全国大会は開催されていません。日本や韓国など東アジアの国だけです。実はブラジルでは、かつて小学生の全国大会を開催していた時代があったそうです。ところが、その時代にいい選手が生まれてきているかというと、結果的に育っていなかったのです》
そしてこんな一文にもあるように、子どものときに「勝つこと」だけを目指していくと結果がついてこない。だからサッカー大国では、子どもの全国大会を実施していないという事実は、実に深いと思った。
《勝ち負けがはっきり決まるようなメニューをたくさん子どもにやらせます。例えば、ドリブル競争やシュートゲームなどをふたりで競争させます。その中で勝ったら、今度は勝った人の中から相手を探して、勝った者同士で対戦します。このような勝ち負けが決まるゲームをたくさんすると非常に集中し、どうしたら勝てるかということも自分で考えるようになり、子どもは上達します》
《「子どもが自分から進んでやるっていうことが本当に大事です。サッカーが大好きだから、一生懸命サッカーをする。大好きだと興味がわく。どうしたらぼくはうまくなるのかな、どうしたら試合でうまくいくのかな。いろんなことを自分たちで気づいて、考えながらやってほしいと思います。そういった時間の中で、間違いなく子どもはうまくなりますよ」》
僕が取材してきた「ヨコミネ式」の保育園でも、まったく同じことを言っていたな。とにかく自分から取組むようにさせるのが大切。大人はその仕掛けをしてやるだけで、いい。
《ポジションをあまりうるさく言うと、そこに「判断」がなくなります。「今危ないから、ぼくは戻るよ」「今、チャンスだからぼくは前に行くよ」そういう一瞬の判断、サッカーでよく言われる「嗅覚」が養われません》
このポジションにとらわれないというのも、大きな認識。
《サッカーだけでなく、スポーツは日々進化しています。以前はこういわれていたのに、今はそれが全否定される。そんなことは日常茶飯事です。例えば、給水。以前は水を飲むなと言われました。(中略)サッカーなら子どものヘディング。以前は幼児でもヘディングの練習をやらせていました。10数年前に日本でもヘディング練習が幼児の脳に与える負担が社会的な問題になりましたが、ヨーロッパなどサッカー先進国では、もっと以前から子どもにはヘディングをやらせてはいませんでした。7〜8歳では浮いたボールが蹴れません。ボールが空中に上がらないのだから、ヘディングを練習する必要はありませんよね》
ヘディングをしないのが今の主流なんですね。あと、本書を読んでいて「これはいい」と思った練習が「シュートの機会が倍増するクアトロサッカー」でした。
《試合は4対4でゴールキーパーなしで行ないます。そのため、シュートを打つ場面が増えます。ゴール前のシュートシーンが8人制や11人制よりも、2倍に増えるというデータもあります。打つ回数が多いので、子どもたちはシュートがうまくなります。端的に言えば、ストライカーが育ち易いのです。同時に、うまいディフェンダーも育ちます。キーパーがいないので、早め早めに攻撃の芽を摘まないといけない。相手の攻撃を読んでディフェンスしていかないとゴールを入れられてしまいます。4人でやる場合、ポジションが非常に簡単です。攻める、守る、中盤を作る。それだけです。これがサッカーでは一番シンプルな形です。日本の練習は3人が多いですが、3人だとトライアングルはひとつしかできません。でも、4人になった途端にトライアングルが4通りできます》
で、最後になるけれど、子どもたちにサッカーをさせる目的は何かということを、この本ではこう書いています。
《私たちが、何のために子どもにサッカーをさせているのか。突然尋ねられると、漠然としていて誰もが答えに窮するテーマですが、その目的はここに集約されているといっても過言ではありません。
他者を信頼し、思いやることのできる子ども。
賢くて、やさしくて、強い子ども。
少なくとも私はそれを目指して子どもに接していきたいと思うのです》
同感ですね。
《子どもにサッカーをさせる意味は何でしょう。「サッカーは人生の縮図のようなものだ。人生のいろいろなことを学べる。サッカーで子どもを育てることができる」。日本代表の監督を務めたオシムさんはそう言っています。》
たかだサッカー。されどサッカー。
うちの子は、今の小学校低学年期に大切なことを、サッカーで教えていこうと思っています。